2020年(令和2年) 11月7日(土)付紙面より
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鶴岡市立荘内病院(鈴木聡院長)と国立がん研究センター東病院(千葉県柏市、大津敦院長)による、がん医療に関する連携協定締結に基づき、荘内病院に6日、東病院の専門医による「がん相談外来」が開設された。今後毎月1回、定期的に開設され、荘内病院に通院している人で希望する患者を対象に治療方針などの悩みを受け付け、その後のより良い治療につなげる。希少がんなど特別な治療が必要な場合は、東病院で最先端の手術を受けられるようにしていく。
がん相談外来は、東病院放射線治療科医長・医療コンシェルジェの全田貞幹医師(46)が担当。荘内病院2階に診察室を設け、毎月第1金曜の午前9―11時、午後2―3時に開設する。1人当たり30―60分の相談時間で、家族と一緒の面談を原則とする。荘内病院以外の患者は、かかりつけ医の紹介を経て同病院を受診後に面談できる。手術などの治療や副作用に関する悩み、生活の上での不安などについて専門医の意見を聞くことができる「院内のセカンドオピニオン」として運用し、受診費用は再診料のみ(3割負担の場合で220円)となる。既に内陸地方の患者からの受診問い合わせもあるという。
開設を前に荘内病院で開始式があり、鈴木院長が「世界のがん診療、医療を牽引(けんいん)する国がんの専門医が相談に乗ってくれる。全田医師のがん相談外来を通じて患者さんが納得の上で診療、治療を続けていけるようにしたい」とあいさつし、全田医師に白衣を手渡した。
全田医師は「主治医と治療について打ち合わせた上で相談を受け、患者さんの治療をサポートする。国がんは国民全体の医療を考えるが、がん相談外来では市民一人一人の医療を担い、患者さんが笑顔になれるようにしたい」と話した。初日は1人の患者と面談した。
両病院は今年7月に連携協定を結んだ。地方創生に伴う国の機関の地方移転の一環で2016年度、同市先端研究産業支援センター内に、国立がん研究センター鶴岡連携拠点「がんメタボロミクス研究室」が設置されたことが縁となった。世界のがん医療開発拠点を目指す国がん東病院が、遠隔地の医療機関と連携協定を結ぶのは初めて。将来的にはインターネットのオンラインを活用した遠隔診療についても共同で可能性を探り、国がん東病院と地方の医療機関との連携を見据えた「鶴岡モデル」の構築にも取り組む。
2020年(令和2年) 11月7日(土)付紙面より
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庄内地方を拠点にした美術団体「白甕社」運営委員の村上幸志(たかし)さん(68)=鶴岡市上畑町=が、日展(本部・東京都)の「改組 新第7回日本美術展覧会」(今月22日まで、東京・国立新美術館)の彫刻部門で初入選を果たした。地元の杉間伐材を使い、ゴリラを彫り上げたもので、村上さんは「知らずに自然を破壊している悲しみを表現したかった」と話している。
村上さんは鶴岡市生まれ。小学3年の時、木登りの様子を描いた絵が文部大臣賞を受賞した。鶴岡南高では、美術教師で後に洋画家として独立した齋藤求氏に師事し、絵画を制作。首都圏の大学卒業後は重機メーカーに就職した。秋田市に単身赴任していた2001年には林業関係者と親しくなり、「秋田木登りクラブ」を設立。木に触れる機会が増え、独学で彫刻を始めた。
定年で帰郷後の2017年、白甕社会員になった。それまでは著名な絵画の人物をモチーフにした作品などが多かったが、入会後は「創作」を強く意識するようになり、同年から日展に出品。今回、4度目の出品で初入選を果たした。
入選作は「森・憤怒」。高さ約1・2メートル、幅、奥行きとも約60センチの木彫で、人間の森林破壊によって取り残されたゴリラの怒りと孤独を表現したという。
以前から前京都大総長の人類学者で、霊長類研究の第一人者・山極壽一さんの本をよく読んでいた。2年ほど前からゴリラをモチーフにする構想を抱き、書物や動画を見るなどしてイメージを固めていった。今春、山極さんが新型コロナウイルスについて「自然破壊が真因」とする新聞寄稿を読み、テーマを決めた。中央の展覧会では高価な材料を、高い技術力で完成度高く仕上げる人が多い。しかし村上さんは敢えて地元の間伐材を使い、5月から約半年かけ、なたやカッターなどで夢中に彫り上げた。
村上さんは「出品直前に大きなひびが入り、修復に追われた。今年も駄目だと思ったが、むしろ勢いや動きが出た形になり、それが評価されたのでは」とみる。
そして、「最近の子どもは木登りをしなくなった。みんな『森は大切』だと言うが、暮らしの中で実践できるかは、幼い頃から木を肌で感じるような体験をしてきたかによる。知らず知らずに自然を遠ざけ、破壊している悲しみなどを表現したかった」とする。入選には「最初は周囲にも信じてもらえなかったが、徐々に実感がわいてきてうれしい。今後はさらに上の特選を目指し頑張る」と語った。