2020年(令和2年) 3月18日(水)付紙面より
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地域医療について市民の視点で語り合う「鶴岡市地域医療を考える市民委員会」が16日、市総合保健福祉センターにこ・ふるで開かれた。庄内南部地域の基幹病院となっている市立荘内病院が地域医療に果たす役割をテーマに話し合い、市民委員からは「荘内病院への認識不足や勘違いが、患者や市民の不満や苦情につながっている面もある。病院側が正しい情報を広く発信する必要がある」などの意見が出された。
市民団体や患者会など市民委員11人で構成し、昨年12月に発足。瀬尾医療連携事務所の瀬尾利加子社長が委員長、秋山美紀慶應義塾大環境情報学部教授がコーディネーターを務める。
この日は2回目の会議で、鈴木聡荘内病院長が「庄内の地域医療と荘内病院の役割」と題して講話した。本年度の医師数が72人で全国の500床以上の公立病院の平均医師数に対し20人程度少ないこと、医師不足に伴う医師派遣など日本海総合病院や山形大医学部、鶴岡地区医師会との連携などの現状を説明。その上で「荘内病院の強み」として、庄内全域の入院患者数は日本海総合病院が過半数を占める診療科が多いものの、小児、皮膚、外傷、神経系は荘内病院が上回り、庄内全域の救急搬送入院患者の4割以上、南庄内地域は8割以上を荘内病院が担い、特に脳血管内手術のほとんど、ハイリスク分娩(ぶんべん)の6割は荘内病院で対応していることなどを紹介。「庄内全域の2次医療圏は“ワンチーム”の思いで、今後とも荘内病院は住民の健康と命を守ることを最大の使命に質の高い地域医療を提供していく」と述べた。
委員からは「NICU(新生児集中治療室)が庄内で唯一、荘内病院にあることを知らなかった。安心して出産、子育てできる環境にあることを若い世代にもっと発信してほしい」「入院ベッド数が減少傾向にあるなど他の医療機関を含めた地域医療の現状を市民に知ってもらい、理解を深める機会を設けてほしい」などの意見が出され、今後各委員が所属する団体内で荘内病院や地域医療に関する市民の声を広く集めることを申し合わせた。
市民委員会は新年度以降も継続し、身近な医療や介護、福祉について意見交換し、これを基に市民アクションプラン(行動計画)の作成を目指していく。
2020年(令和2年) 3月18日(水)付紙面より
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山形県自動車販売店リサイクルセンター(本社・山形市、遠藤榮次郎社長)が鶴岡市三瀬地区などで、廃棄されるバンパーを再利用した海藻の付着実験を行っている。廃バンパーを溶かしたプラスチックにガラスを混ぜたプレートを海中に沈め、アカモク(ギバサ)が付着することで「磯焼け」の対策となり、さらに食用となるアカモクは漁業者の収入アップにつながる可能性もある。また、海上に出た防波堤の平らな部分に設置することで岩ノリが付着し、一石三鳥、四鳥もの効果が期待されている。
同センターは、3年ほど前から二酸化炭素を増やす原因となる廃プラスチックに注目し、再利用の方法を模索してきた。以前は車のシートベルトを海に沈め、海藻の付き具合を調べる実験を行っていたが、波に流されるなどして失敗に終わった。その後、山形大と連携し、1年がかりで試行錯誤を重ねて完成したのが廃バンパーの再利用だ。
プラスチック製のバンパーだけでは比重の関係で海に浮くため、フロントガラスを粉々に砕きバンパーとともに溶解して混ぜたプレートが完成。ガラスには中間膜と呼ばれる接着性樹脂も混じるため、比重が大きくなり海中へ沈めることに成功した。海藻が付着しやすいように表面に凹凸も入れた。
このプレートに重りを付けて海中に沈める方法では砂をかぶり効果が出ない可能性がある。そこで考えたのが、重りを付けて防波堤から海中にぶら下げる方式だ。今年1月に地元漁業者の協力を得て実証実験を進めており、今秋以降にアカモクの付き具合を確認する。並行して県水産試験場(鶴岡市加茂)でもアカモクの付着具合を確認する実証実験が進められ、今月9日に十分な量のアカモクが育つことを確認した。
同様に試行錯誤を重ねているのが岩ノリのプレートへの付着だ。防波堤の平らな部分にプレートを設置することで、岩ノリ採取につなげる計画が進められており、高齢化が進む漁業者の負担軽減へつなげる。
アカモク、岩ノリのプレートへの付着については今後、山形大や地元漁業者と連携しながら実証実験を重ねる予定。夏場、外海近くの防波堤にプレートを設置することで海藻の胞子が付きやすくなり、効果が高まる可能性もあるという。
同センターの菅原弘紀専務は「バンパーは廃車の部品の中でも特に処理が難しく、県内でも約7万個の処遇に困っている状況。波に持っていかれないよう防波堤上にプレートを設置する方法など、まだ課題はあるが環境問題や廃プラスチック対策に役立てたい」と話している。