2020年(令和2年) 3月3日(火)付紙面より
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庄内地域の多くの高校で1日、卒業式が行われた。新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、各校では参加者を限定して規模を縮小するとともに、時間を短縮して実施された。保護者が出席できない卒業式に「両親に晴れの姿を見せることができず残念」と話す卒業生もいた。
県立鶴岡北高(佐賀井仁校長)の卒業式はこの日、卒業生156人のほか、教職員、PTA会長、在校生から生徒会長1人に出席者を限定して体育館で行った。県教育委員会が県立高校に、卒業式の出席は原則として卒業生と教職員に限り、来賓は招かないよう指示したのを踏まえた。通常なら保護者席が設けられる体育館アリーナの半分が空席で、さらに卒業生の席もスペースを広げるなど対応した。
例年は一人一人に卒業証書を授与しているが、時間短縮もあり、式典では4クラスの各代表生1人ずつへの授与となった。式辞で佐賀井校長は「保護者や在校生も一緒に、皆さんの晴れの姿を見てもらいたかったが、残念でならない。このような形の卒業式となったが、決して色あせるものでなく、誇りを持って卒業してほしい」と述べ、唯一の来賓となった飯野裕也PTA会長は「家に帰ったら、晴れの姿を楽しみにしていた家族に最高の笑顔を見せてあげてほしい」と呼び掛けた。卒業生代表の榎本貴子さん(18)は答辞で「急な変更にもかかわらず対応していただいた先生方、ありがとうございます。何げなく続いた日々の学校生活こそが掛け替えのない思い出になりました」と涙ながらに述べた。親元を離れ4月から新潟市内の専門学校に進学する佐藤杏咲(ももか)さん(18)は「両親やお世話になった方々から晴れの姿を見てもらえないのは、やっぱり残念です」と話した。
一方、鶴岡東高(齋藤哲校長)では当初、2日に卒業式を予定していたが、1日に前倒しし、各教室での卒業証書授与に変更して対応した。
2020年(令和2年) 3月3日(火)付紙面より
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酒田に古くから伝わるつるし飾りの一種「傘福(かさふく)」を集めた展示会「湊町酒田の傘福」が1日、酒田市日吉町二丁目の「山王くらぶ」で開幕。大広間には鮮やかな布細工がつり下げられた傘福がずらりと並び、みやびな世界を演出。初日午前から大勢の観光客らが訪れ、豪華で愛らしい傘福の数々に見入っていた。
傘福は江戸時代に酒田に伝わったとされる。和服の端切れなどを用いて猿やエビなどの動物、花や桃、大根、カブなどの植物、巾着や宝袋などの縁起物を作製。それらを一本のひもに結び付けて周囲を赤や緑の幕で覆った傘の骨につり下げる。子どもの健やかな成長などを願い、ひな祭りの際に神社などに奉納したという。
展示は、酒田商工会議所女性会(岩間奏子会長)が2005年、女性会の設立25周年記念事業の一環とし、伝統工芸を復活させ後世に引き継ぐとともに、「庄内ひな街道」に一層の彩りを加えようと企画。翌06年に第1回を行って以来、毎年この時期に開催し今年で15回の節目を迎えた。
今回は大小約50基を展示。市内在住の女性13人で組織する傘福くらぶ(宮田千賀子会長)のメンバーが新たに作り直した「新・野点の椿999」は、朱色の傘に連なる色とりどりの八重咲きのツバキが美しい。女性会主催の講習会で市民有志が製作した、子孫繁栄の象徴「ネズミ」をモチーフにした布細工を連ねた「市民の傘福『干支(えと)ねずみ』」は個性豊か。来館者たちは会場に入るや、「きれい」と歓声を上げ、ひと足早く「酒田の春」を満喫していた。
岩間会長は「新型肺炎のため多くのイベント・展示会が自粛となる中、スタートできたことに感謝。女性の力、熱意で街を元気にしたい。元気を発信する展示になれば」と話した。展示が11月12日(木)まで。期間中、女性会と傘福くらぶは随時、ネズミをモチーフにした布細工の講習会を実施し、完成したものは「市民の傘福」として飾る。