2020年(令和2年) 9月10日(木)付紙面より
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鶴岡市のあつみ温泉は鯛(たい)で盛り上げタイ」とばかりに、温泉を挙げて、鯛料理に取り組むことになった。「あつみ温泉 詣(もう)でる つかる 頂きます 鯛料理試食会」が8日、萬国屋で行われ、全7つのホテル・旅館が新しいメニューを持ち寄り、県・鶴岡市など関係団体にお披露目した。
主催したあつみ観光協会の若松邦彦会長(あつみホテル温海荘)は「昨年6月の県沖地震の影響がやっと収まったと思ったら今度はコロナだった」と今春、各施設とも営業自粛していた苦難の時期を振り返り、その中で新たな希望を「鯛」に求めたことを明かした。
発案したのは萬国屋。昨年から経営を受け継いだ上山市・古窯グループの佐藤信幸社長(67)は「酒井の殿様が温海に来た際、よく所望したという鯛。これに注目すべきでは」と提案。
もともと各旅館とも夕食時はメーンディッシュとして出していたが、萬国屋は朝食に「3度美味しい鯛料理」として鯛めし、鯛茶漬けなど、鯛尽くしのメニューを用意、評判を呼んだ。コロナ禍で人が密になる「朝食バイキング」を取りやめ、1人ずつのお膳にして活路を見いだしたのだが、これが評判を呼んだ。
第三者的にあつみ温泉の魅力を考察していた新経営者の鯛抜てきに「灯台もと暗しだった」と地元が呼応した形だ。
県漁協は「鯛の漁獲高は減っており、最近は年57トンだが、地元の人たちがそのおいしさを認識してくれたら、漁師にも大きな励みになる」と鯛大作戦にモロ手を挙げて賛成。会場でも、招待客が料理に舌鼓を打った。
酒田港から水揚げされたばかりの3・1キロの真鯛を萬国屋・中川清昭専務(58)は若松会長とともに掲げた。県調理師会会長を歴任、日本料理の全技連マイスターでもあるが「朝食の鯛は結構自信作です」と胸を張り、そのめでたい将来を自分たちに言い聞かせていた。
◇試食会の提供メニュー▽萬国屋=三度美味しい鯛の朝食▽高見屋別邸・久遠=鯛の麦切り・冷製パスタ風▽たちばなや=温海の藻塩と温海杉を使った真鯛の杉板焼き、真鯛の茶しゃぶ、真鯛の酒蒸し▽瀧の屋=鯛のかぶと揚げ▽かしわや旅館=昆布締め鯛のカルパッチョ▽あつみホテル温海荘=鯛の蒸し物▽東屋旅館=鯛のぽん酢風味焼き
〇…あつみ温泉側は県の「県民泊まって元気キャンペーン」(半額クーポン)の利用対象拡大にも元気づけられた。これまでは県内在住者が対象だったが、8日、東北各県・新潟県まで拡大が決まった。地理的にも特に新潟からの観光客が見込め、秋の観光シーズンに弾みがつく。加えてコロナ禍が落ち着いての「GoToトラベルキャンペーン」対象に人口が多い東京都が加わることに期待を寄せていた。
2020年(令和2年) 9月10日(木)付紙面より
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鶴岡市の羽黒山、月山の麓の2地区で計40基程度の大型風車による大規模な風力発電事業を計画する前田建設工業(東京都千代田区、前田操治社長)は9日、環境影響評価法に関する手続きを廃止し、計画を白紙撤回すると発表した。出羽三山の山岳信仰の地での事業計画に対し、計画地の地元住民らから景観や自然環境の改変への懸念が表明され、建設の中止を求める声が上がっていた。同社は「地域の反対意見を受け、白紙撤回を判断した」と説明した。
同社は7日から8日にかけ、鶴岡市や計画地の自治組織の代表らに「反対署名活動も始まっている中で計画を進めることは難しい。白紙撤回する」と連絡した。7日の社内会議で最終判断したという。荘内日報の取材に同社広報部は「地域の方々からの反対意見などを受け、社内で審議した結果、計画を白紙撤回する方向にした。景観への配慮や神聖な山ということを踏まえ、さまざまな声を基に総合的に判断した」と話した。
地元山伏や学識者、自然保護団体など有志で先月末に結成した「出羽三山の風車建設に反対する会」は、計画の撤回・中止を求める署名活動を進めていた。9日午前、同市いでは文化記念館で記者会見した、同会の呼び掛け人で共同代表の星野博羽黒町観光協会長は「出羽三山の伝統と歴史、山岳信仰の場所を守ることができ、喜ばしいこと。協力いただいた皆さんに感謝したい。二度とこうしたことがないよう、県や市に何らかの規制など対応を求めたい」と語った。
反対署名活動など「市民の間に混乱が生じている」として、計画推進への懸念とともに、計画自体を取り下げるべきとの考えを示していた鶴岡市の皆川治市長は9日、「多くの皆さんの思いが届き、出羽三山エリアには大規模風車を建設すべきでないと判断したのではないか。今後、市の風力発電施設設置に関するガイドラインについて専門家の声や先進地の事例を研究し、改定作業を進める必要がある」と述べた。今回の計画地が県が示した「適地」を含む点については、「県と協議し必要な見直しをお願いしたい」とした。
同社は 1藤島地域の添川地区を中心に一部庄内町三ケ沢にかかる区域 2櫛引地域たらのき代を中心に羽黒地域川代地区を含む区域―の2地区合わせて2296ヘクタールで、県内最大規模となる計40基程度の風力発電事業を計画。事業実施に向け8月7日に始まった環境影響評価の第1段階となる計画段階環境配慮書の縦覧や、先月下旬からの地元説明会で計画概要が公表され、「山岳信仰の地としての出羽三山にそぐわない」など計画の撤回・中止を求める反対の動きが広まっていた。