2020年(令和2年) 9月16日(水)付紙面より
ツイート
元気で長生きしてね―。「敬老の日」を前に鶴岡市温海地域の越沢地区で13日、地元の在来作物「越沢三角そば」で打ったそばと、地区で使用できる商品券が、数え年70歳以上の高齢者94人にプレゼントされた。地区を挙げてお祝いする恒例の敬老会が新型コロナウイルス感染症の影響で中止となり、自宅で家族と一緒に敬老会を楽しんでもらおうと、越沢自治会(伊藤善一郎会長)が企画。子どもたちもお年寄りたちへの感謝の気持ちを込め、そば打ちを手伝った。
摩耶山の麓の山間部にある越沢地区は約80世帯、約260人が暮らし、3世代同居が多い。例年9月に敬老会を開き、にぎやかに敬老を祝い合っている。今年は、多くの住民が参加する敬老会は中止となったものの、お祝いと感謝の気持ちを伝えたいと、地元特産の越沢三角そばを贈ることにした。
そばの里・越沢で「名人」と呼ばれる大滝慶喜さん(77)、大滝由吉さん(67)、百瀬久美子さん(62)の3人が、高齢者1人当たり2食分のそばを打ち、自治会担当者が対象者の全世帯を回って届けた。敬老のお祝いには、地元の雑貨店・五十嵐商店と越沢そば処(どころ)「まやのやかた」で利用できる1500円分の地域商品券、感謝とお祝いのメッセージも添えた。そばには「名物のそばで健康長寿を」の思いを込め、高齢者たちは笑顔で受け取った。
また地区の集会施設「越沢センター」では、小中学生の親子11組が集まり名人から手ほどきを受け、越沢三角そばのそば打ち体験も行われた。小学4年の藤田心愛(ここあ)さん(9)は、母親の美香さん(39)と一緒に挑戦。親子ともそば打ちは初めてといい、心愛さんは「こねたり、切ったりするのが難しかった。いつもかわいがってくれるおじいちゃん、おばあちゃんには元気で長生きしてほしい」、美香さんは「上手にはできなかったかもしれないけど、孫の打ったそばをきっと喜んでくれると思います」と話していた。
2020年(令和2年) 9月16日(水)付紙面より
ツイート
「日本三大古代布」の一つといわれ鶴岡市温海地域関川地区に伝わる「しな織」。これを現代的なデザインの製品にして販売している同市大山二丁目の「丸石産業」(石田純子社長)が、来年1月にフランス・パリで開かれるインテリアとデザインの国際見本市「メゾン・エ・オブジェ」に、オリジナルの照明器具を出展することになった。これまで主力としてきた国内の百貨店市場が伸び悩む中、「世界」を視野に販路拡大を目指す。
しな織はシナノキの樹皮を繊維にして織るもので、沖縄県の芭蕉布、静岡県の葛布とともに日本三大古代布と呼ばれている。軽く、丈夫で、ざっくりとした風合いが特徴だ。
丸石産業は石田社長の夫の故・誠さんが1990年に創業。しな織を、帽子や財布など現代的なデザインの製品にし、主に百貨店などに販売してきた。2012年4月に誠さんの死去後は一時、事業を休止していたが、14年に長男・航平さん(37)が跡を継ぐ形でディレクターとなって事業を再開。今回は、販路開拓事業として国の持続化補助金に申請し、6月に採択が決定。見本市主催者の審査も通過し、同社としては初めて国際見本市に出展する。
出展するメゾン・エ・オブジェは来年1月22―26日にパリで開かれる。インテリア業界の「パリコレ」とも呼ばれている世界最大規模のインテリアとデザインの見本市で、前回(今年1月)は、世界166カ国の2910社が出展し、約8万4000人が来場したという。
出展する照明器具はしな織をシェード部に使ったもので、しな織の透明感を生かし、自然で、柔らかな光が特徴。現在、京都市内の業者と連携し、試作を重ねている。5種程度を出展の予定だ。
航平さんは「欧米では『自然』『手づくり』が高く評価されるので、しな織の良さもきっと分かってもらえるはず」とみる。また、シナノキの近縁種の菩提樹(ドイツ語でリンデンバウム)は欧州で神聖視され、シューベルトの歌曲でも有名。航平さんは「欧州の近縁種もかつては繊維が使われていた歴史があり、素材としても親しみを持ってもらえるのでは」とし、「国内百貨店市場は伸び悩んでおり、これからは世界に目を向けて市場拡大していきたい。新型コロナの影響が心配だが、予定通り開かれることに期待」と夢を膨らませている。