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2020年(令和2年) 9月6日(日)付紙面より

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庄内発の「日本ワイン」 ピノ・コッリーナファームガーデン&ワイナリー松ケ岡が完成

 鶴岡市の農業生産法人「エルサンワイナリー松ケ岡」=早坂剛社長(81)=が、同市羽黒町松ケ岡に整備していたワイン醸造所「PINO COLLINA(ピノ・コッリーナ)ファームガーデン&ワイナリー松ケ岡」が完成し4日、現地でオープンセレモニーが行われた。県内17カ所目のワイナリーで、150年前に旧庄内藩士たちが開墾し絹産業を興した土地で「自然」にこだわった製法で、今月中旬にも初の醸造に入り、早ければ来年秋ごろにも新たな庄内発の「日本ワイン」を初出荷する。

 法人は、結婚式場などを手掛けるエル・サン(早坂社長)が設立。2017年から松ケ岡のほ場5カ所、計約4ヘクタールに白、赤各4種の計8種、約5000本のワイン用ブドウを植えた。

 醸造所は、旧藩士たちが開墾して建てた蚕室群南方の敷地1665平方メートルに昨年10月から整備していた。木造・鉄筋コンクリート造り地上1階・地下1階建て、延べ床面積は515平方メートル。地階には醸造室や充填(じゅうてん)室、貯蔵室、樽室、地上階には除梗・粉砕室、レストラン、厨房、ショップスペースなどを設けた。施設名はイタリア語でピノは「松」、コッリーナは「岡」。開墾の歴史への敬意を込めたという。

 川島旭ジェネラルマネージャーによると、自然の力に逆らわない「ヴァン・ナチュール」(フランス語。自然派ワイン)を目指す。ブドウはなるべく農薬などを使わず、地元の風土に合った栽培法で育てる。醸造時は絞った果汁や果実にストレスを掛けないよう、ポンプなどは使わず、滑り台など重力の力でタンクに収める「グラビティ・フロー・システム」を採用し、加糖・補酸などは行わない。

 計画では、今年は白2種(シャルドネ、ソービニオン・ブラン)、赤2種(メルロー、ピノ・ノワール)の計4種のブドウを収穫し、約6キロリットル(750ミリリットル瓶で約8300本)を仕込む。1カ月から1カ月半後にオーク樽に入れ、さらに瓶詰にして半年から1年ほど熟成させ、「理想では2年半かけて出荷したい」(川島さん)。5年後には年間生産量を1万本に増やし、スパークリングワインも手掛ける。ワイナリーに関わる総事業費は約3億6000万円。新たに5人を雇用した。

 ワインの価格は1本(750ミリリットル)2800―3000円程度からで、同ワイナリーやエル・サングループの各施設、オンラインショップなどで販売していく。

 この日のセレモニーは3密を避けて2回に分けて行われ、計約240人が出席。初回で早坂社長は「イタリア・ピエモンテで、アルプスをバックにブドウ畑が広がるランゲの丘を見た時、『似ている。松ケ岡にブドウを植えたい』と思った」と振り返り、「ナチュラル(自然な)にこだわったワインを造り、誇りを持てるワイナリーにしたい」と抱負を語った。

 加藤鮎子環境大臣政務官、致道博物館の酒井忠久館長、荘内銀行の田尾祐一頭取、鶴岡商工会議所の加藤捷男会頭の4人が「鶴岡の新たな食文化を発信して」など祝辞を述べた。

 ピノ・コッリーナは10月8日(木)からプレオープンとして、レストランやショップを始める。

ブドウ園からピノ・コッリーナ(奥)を望む
ブドウ園からピノ・コッリーナ(奥)を望む

ピノ・コッリーナの地階で醸造の過程を説明した早坂社長=4日
ピノ・コッリーナの地階で醸造の過程を説明した早坂社長=4日


2020年(令和2年) 9月6日(日)付紙面より

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動物学教育賞を受賞 村上さん(加茂水族館名誉館長)全国表彰

 鶴岡市立加茂水族館名誉館長の村上龍男さん(80)=同市羽黒町野荒町=が4日、公益財団法人日本動物学会(岡良隆会長)の本年度動物学教育賞を受賞した。

 同賞は動物学への社会への普及に著しく貢献した個人、団体を顕彰するもので、2011年に創設以来、昨年度まで8人が受賞している。今年の受賞対象は村上さん一人で、「刺胞動物、有櫛動物クラゲ類の生体展示、繁殖、および教育普及活動」をテーマに受賞した。水族館関係者の受賞は初という。

 村上さんは1967年から2015年3月まで加茂水族館館長を歴任。その間、クラゲに特化した展示で危機的状況だった経営をV字回復につなげ、その劇的ドラマは度々、全国放送のテレビでも取り上げられた。クラゲ展示数でギネス世界記録に認定されたり、飼育、繁殖技術の研究などにも尽力。今回はクラゲの飼育や展示、学習会などを通じ、海洋生物の知見を広めた功績が認められた。

 表彰は例年、日本動物学会の年次大会で行われているが、本年度の第91回大会はこの日、オンラインで開催。村上さんは加茂水族館で、家族が見守る中、オンラインの表彰式で賞状を読み上げられた。その後、元水族館職員の女性から花束を受け取った。

 村上さんは「どん底の時代は営業に回っても相手にされず、相手にしてもらえることを夢に見た。『来年は倒産だ』と覚悟するところまでいった。それがクラゲのおかげで立ち直った。今は、苦しかった時の方が夢だったのではとも思うこともある」と振り返った。そして、「名誉ある賞を頂けるのは、仲間や周囲のおかげで感謝。館や地域にとっても名誉なこと。職員も実力が付いてきたので、これを機にさらに発展させてほしい」と語った。

オンラインの表彰式後、家族と記念撮影する村上さん(前列右)=4日、加茂水族館
オンラインの表彰式後、家族と記念撮影する村上さん(前列右)=4日、加茂水族館



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