2021年(令和3年) 1月9日(土)付紙面より
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鶴岡工業高等専門学校(高橋幸司校長)創造工学科の上條利夫教授(40)=分析化学・材料化学=を中心とする研究グループが、「イオンブラシ」を使ってウイルスを不活化するコーティング技術の開発研究で、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(本部・東京都、AMED)の事業採択を受けた。ドアノブやマスクなどにコーティングすることで、ウイルスを不活化する効果が長期間持続する技術で、実用化されれば、ウイルスに対する不安解消につながると期待されている。
イオンブラシは、界面活性剤(石けんの主成分)の成分を含む高分子が高密度でたくさんつながった状態で、ブラシの長さは数百―1000ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)。化学反応で金属やガラスなどの表面に固定させたり、液状にして塗布するなどのコーティング技術がある。
上條教授は約10年前からイオンブラシについて研究。コーティングによって摩擦抵抗が格段に減ることから、従来はそうした工学的な観点から研究してきた。しかし、新型コロナウイルスが世界で猛威を振るう中、同ウイルスが界面活性剤の働きで外膜(エンベロープ)が壊れ不活化することを知り、昨春からウイルス感染対策を狙いに研究。これまで東京農工大や京都大、横浜国立大と連携した研究で、イオンブラシをコーティングした場合、ウイルスが90%不活化するという実験データを得ている。石けんと違い、一度コーティングすれば、不活化の効果が長期間持続するのが特長だ。
AMEDが公募した「ウイルス等感染症対策技術開発事業」(本年度2回目)で昨年11月、申請51件のうち、採択10件の一つに選ばれた。同機構の公募事業で、高専が代表機関になって採択されるケースは珍しいという。今年3月まで7600万円程度の研究費助成を受け、コーティング技術の実用化に向け、より効果が高く、安全で、汎用性の高いイオンブラシの構造などを研究している。
上條教授によると、実用化されれば、窓ガラスやテーブル、ドアノブ、フェースシールド、マスク、防護服などにコーティングすることが想定されている。スプレー式にすれば、より身近で使える。1年以内に実用可能性調査に入ることを目指している。
上條教授は「今回の新型コロナをはじめ、さまざまなウイルスの脅威をシャットアウトし、人々の不安解消につながれば」と研究に寄せる思いを語った。
2021年(令和3年) 1月9日(土)付紙面より
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発達した低気圧に伴う暴風雪などの影響で、庄内地方では7日、酒田市、鶴岡市、遊佐町、庄内町の一部で合わせて最大約6500戸(街路灯など含む)の停電が発生した。山形地方気象台によると、鶴岡市鼠ケ関では最大瞬間風速33・9メートルを記録し、観測史上1位を更新。強風などによる建物被害も相次いだ。
同気象台が8日午前に発表した気象情報によると、発達中の低気圧が北日本を北東に進んでいる影響で強い冬型の気圧配置となるため、県内では引き続き大雪による交通障害、建物、農業施設への被害に注意や警戒が必要。11日ごろにかけて気温の低い状況が続く見込みで、9日にかけて予想される24時間降雪量はいずれも多いところで山沿い60センチ、平地40センチ。交通機関への影響では、強風や大雪が見込まれるとして8日、JR羽越本線特急いなほは午前中の上下線5本の列車を運休し、全日空の庄内―羽田線は全便欠航した。
最大瞬間風速として酒田市飛島で42・2メートル、同市浜中で33・4メートルを記録し、統計開始以降1月としてはいずれも史上1位となった。鶴岡市では8日午前までに住宅や空き家などのトタン屋根や外壁が飛び、窓ガラスが割れるなどの建物被害が26件発生した。
このうち7日午後3時ごろ、同市大岩川で温海町森林組合製材工場の屋根の一部が飛ばされ、近くに駐車していた車が損傷した。いずれも人的被害はなかったという。
暴風雪の影響で7日午後、酒田市本町二丁目の市庁舎前に展示されている酒田のシンボル・大獅子が台座からずり落ちた。
1976年に発生した酒田大火からの復興を記念し79年、「大獅子」(縦、横、高さ各約2メートル)を雌雄2対、98、99年に「仔獅子」(同約1・3メートル)も雌雄2対それぞれ市が製作。2015年には赤ちゃん獅子8体が加わり、「ファミリー」を形成している。いずれもFRP(繊維強化プラスチック)製。
市内に点在する獅子を管理している市交流観光課によると、ずり落ちたのはいずれも79年に製作された黒獅子「松」、赤獅子「桜」の2体で、同3時ごろに確認したという。台座と大獅子相互の骨組みを強力なベルトで束ねており、その骨組みに沿って前方にずれ、あごの部分が地面に落ちたという。