2021年(令和3年) 1月14日(木)付紙面より
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鶴岡市の致道博物館(酒井忠久館長)の多層民家「旧渋谷家住宅」(国指定重要文化財)で12日、恒例の「いぶりだし」が始まり、囲炉裏のたき火が訪れた人を和ませている。
豪雪地帯の旧朝日村田麦俣に200年前の1822年に建てられ、1965年に同博物館に移築された。囲炉裏から立ち上る煙は茅葺き屋根に潜む害虫を駆除し、すすが壁や屋根の縄を強くするといわれる。移築後は冬季のみ人を雇って火をたき、風物詩となっている。
初日の12日は、ともに2年目という工藤喜美さん(59)=同市城南町、佐藤妙子さん(55)=同市神明町=の2人が午前9時ごろからたき火を始めた。館内の庭木の剪定(せんてい)枝などをくべると、もうもうとした煙とともに赤い炎がゴーッと立ち上り、自在かぎにつるした鉄鍋の湯がシューシューと沸騰。時折、火の粉がパチパチッとはぜた。
工藤さんと佐藤さんは「火を見ていると飽きない。世間では新型コロナで大変だが、ここだけ違う時間が流れているよう」と話しながら、火箸で薪の位置を直した。来館者が来ると、「さあ、近くに…」と囲炉裏端に促していた。
いぶりだしは風の強い日などを除き、3月上旬ごろまで毎週火、土曜日の午前10時ごろから午後1時ごろまで行う。