2021年(令和3年) 7月9日(金)付紙面より
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人工衛星から撮影した画像で水稲の生育状況を分析し、施肥や適期刈り取りなどに生かす「衛星リモートセンシングとWebGISを活用した『つや姫』の生育診断技術」の実演会が7日、鶴岡市播磨のほ場で行われた。庄内一円の「つや姫」生産者らが、衛星から撮影し穂肥(ほごえ)の必要性を分析したほ場の画像と実際の生育状況を見比べ、新システムへの理解を深めた。
このシステムは、県農業総合研究センターが2019年度に開発した。農作物が反射する太陽光を人工衛星で捉え、赤外線の吸収量などから生育状況を分析する「衛星リモートセンシング」と、インターネットの地図情報システム(GIS)を組み合わせたもの。衛生データ解析などを手掛ける「ビジョンテック」(茨城県つくば市)のサイト「アグリテック」にスマホやパソコンからアクセスすると、庄内全域の水田について、1筆単位で生育状況(窒素吸収量)や穂肥の必要性などの情報を入手できる。
農業者の減少や高齢化、農地の大規模化・分散化の傾向が強まる中、これまで生産者の勘に頼っていた判断を、より的確、迅速、簡便にできると期待されている。
県庄内総合支庁は実用化に向け、今年5月に庄内地方のJAと5市町で「スマートつや姫広域実証研究会」(会長・上野宏樹県庄内総合支庁農業技術普及課長)を設立。「つや姫」の穂肥診断を中心に、向こう3カ年、庄内地方の5カ所に実証ほを設けて課題を検証するとともに、JAや生産者に技術の周知を図っている。
今回の実演会は同研究会が中心となって開き、生産者や研究会の関係者ら約50人が参加した。鶴岡市播磨のJA鶴岡北部カントリーエレベーター駐車場で、庄内総合支庁農業技術普及課職員がシステムの概要を説明。周辺の水田を穂肥診断した結果として、「緑=追肥可」、「黄=地上調査で再診断」、「赤=減肥が必要」の3種に色分けした画像を示し、「最終的な判断は現場を見て行う。これまでは現場で茎数や葉色、草丈を数値化し、勘に頼って穂肥の時期などを決めていたが、より多くの田んぼを、正確に、簡便に調べられる」と導入メリットを強調した。
その後、近くのほ場に移動し、「黄」のほ場は「緑」のほ場より条間が狭く、葉が繁茂している様子などを確認した。
水田約15ヘクタール(うちつや姫約3ヘクタール)を耕作している庄内町生三の高橋隆さん(65)は「リモートセンシングには以前から興味があり、やっと生産者の手が届くところまで来たと感じた。面積を拡大するには必要な技術だが、現場でうまく活用できるかはまだ不透明で、今しばらく様子を見たい」と言い、農業技術普及課の佐藤和則普及推進主幹は「今後はつや姫以外の雪若丸やはえぬきの穂肥診断、刈り取り適期診断への応用も研究しながら、技術への理解を広め、実用化につなげたい」と話した。