2021年(令和3年) 7月16日(金)付紙面より
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新暦のお盆入りの13日、鶴岡市馬場町の国指定重要文化財・旧風間家住宅「丙申堂」の仏壇前に、お盆用の真新しい切子灯籠(きりこどうろう)がつり下げられた。100年以上前の物とされ、長く使用してきた灯籠を保存するため今回、市内の職人たちの手で全く同じ意匠のレプリカが作られたもの。和紙に細かな切子を施した灯籠は歴史的建造物の中で、白熱電球の淡い光を放ち、外からの風に緩やかに揺れ、古くからの商家のお盆の風習を伝えている。切子灯籠は8月のお盆まで一般公開される。
「私が嫁いでくるずっと以前から、7月のお盆に飾られていたようです」。風間家の風間富士子さん(80)は、昨夏まで飾ってきた古い灯籠について話す。白と黒を基調に、灯袋部分は上から見ると細い木や竹ひごで星形に組んであり、直径約60センチ、高さ約80センチの大きさ。外側全体を2枚重ねの和紙で覆い、表面の1枚に「丸に二重亀甲、中に花菱」の風間家の家紋や細かな文様の切子が施され、四方の角には絹の白い造花が付いている。灯袋の下には家紋やひょうたんなどの透かし文様がある長さ約90センチの白い幡(はた)が下げられ、全体の高さ約170センチの大型の灯籠。
風間家先代で鶴岡商工会議所会頭などを務めた眞一さんが2010年に亡くなり10年となった昨年、富士子さんは色がくすむなどした灯籠を、今後は大切に保存し後世に残したいと知人に相談。市内の表具店や指物師、丙申堂を管理する公益財団法人克念社の職員らが協力し、7月のお盆に合わせて灯袋部分のレプリカを作製した。幡は従前の物を下げた。
新暦のお盆の入りの13日に飾り、盆礼に訪れた人々は「素晴らしい、きれいな切子灯籠」と感心しながら見入っていた。江戸幕末に「鶴岡一の豪商」とうたわれた風間家の祖先は越後の国(新潟県)で、切子灯籠を飾る風習は祖先の地から受け継がれたものかもしれないという。丙申堂の障子を開け放し、庭から入る涼しい風が静かに切子灯籠を揺らす中、富士子さんは「皆さんの協力で美しい切子灯籠に仕上がった。繊細で優しい明かりが、お盆を迎えた心を穏やかにしてくれます」と話した。