2021年(令和3年) 10月6日(水)付紙面より
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準絶滅危惧種のタニシを使った循環型農業「タニシ米プロジェクト」を進めている山形大学農学部の佐藤智准教授と学生は、鶴岡市中山の農家・佐藤好明さん(60)の協力を得て水稲を栽培しているが、予想よりもタニシが増えていることが分かった。今年6月下旬に田植えをしたはえぬき(タニシ米)は順調に成長。佐藤准教授は「田植えした時期から比べてタニシは10倍以上増えた。やはり中山地区の環境と無農薬効果が大きい。収穫した『タニシ米』はネット販売して消費者の反応を見たい」と話している。
佐藤准教授と学生が山大農学部の実験田でタニシを使った稲の生育状況を調べたところ、タニシがいる田んぼの方が稲の生育を促し、収量が約10%向上することを突き止めた。山大生が研究していることを知った佐藤さんが全面協力することになり、手始めに1アールの水田で「タニシ米」の無農薬栽培を始めた。
タニシの種類は国内に生息する「マルタニシ」を使用。田植えと同時に約100匹放したが、現在は10倍以上の1000匹を超えるまでになった。今年生まれた子どものタニシが多くを占めた。
佐藤准教授によると、田んぼでタニシは土を取り込みながらフンを出して有機肥料の役割を果たす。タニシがいる田んぼはミジンコや藻類が増え、それを食べる昆虫が集まりだすという。
来週中にも稲を刈り約2週間、天日干しにする。その後、1キロ1000円でネット販売する予定。関係者で「タニシ米」の試食も行う。
協力農家の佐藤さんは「田植え自体が遅れたため収量は取れないが、1年目にしては上出来。わりと粒も大きい。来年が楽しみ」と話す。
佐藤准教授は「タニシが増えたことだけでも一つの成果。田んぼにはトンボがいるし、イモリも戻ってきた。循環型農業を確立するために来年はインドネシアの留学生が研究している『ミズアブ』のフンなどを肥料にして、タニシ米がどのように育つか次のステップに進みたい」と語った。
来年は面積を倍以上に広げて栽培する予定だ。