2022年(令和4年) 6月7日(火)付紙面より
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『ゆで論』の哲学評価に喜び
グルマン世界料理本大賞
スウェーデンで開催されている「料理本のアカデミー賞」とも言われるグルマン世界料理本大賞で、鶴岡市のイタリアンレストラン「アル・ケッチァーノ」のオーナーシェフ、奥田政行さん(52)が2020年に出版した『ゆで論』が「シングル・サブジェクト」部門のグランプリに輝いた。4日(日本時間5日午前1時ごろ)発表されたもので、奥田さんは「データがしっかりしていること、そこに哲学があることが評価され、とてもうれしい」と喜びを語った。
グルマン世界料理本大賞は、1995年にリキュールで有名なコアントロー家出身のエドワール・コアントロー氏によって設立された、世界唯一の料理本アワード。1年間に発行された世界中の料理本やワイン本の中から各部門でナンバーワンの本がグランプリに選ばれている。奥田さんは2017年にも『食べもの時鑑』で「フード・ヘリテージ(食の遺産)」部門のグランプリに輝いている。
『ゆで論』は、それまで言われていたパスタのおいしいゆで方とは違う、奥田さんが経験から生み出したゆで方を、自身の店の若きスタッフのために系統立ててまとめた本。レシピなども紹介しており、家庭でも応用できる。今回は「あることに特化している」というシングル・サブジェクト部門と「革新的な内容の本」に送られるイノベーティブ部門の2つにノミネートされた。また、過去25年間に受賞した本の中から“ベスト・オブ・ベスト”を選ぶ食の遺産部門に『食べもの時鑑』がノミネートされた。
4日に行われたプレゼンでは、庄内の美しい自然や食材の映像なども交えて、羽織はかま姿で庄内の食の魅力を伝えた。主催者のコアントローさんからは、プレゼンの直後に、「君の住んでいる所は素晴らしい。必ず鶴岡に行く」と絶賛された。日本を出発した今月1日からのことを「グルマン世界料理本大賞への旅」と題して、自身のフェイスブックに旅行記を投稿しており、日々応援コメントが寄せられるのを見ながら、励まされると同時に、「グランプリを獲得できなかったら日本に帰れないかも」と思っていたという。
受賞を果たし、「ほっとしたというのが正直な感想。英訳の話も出ているので鶴岡、そして庄内が世界に発信されるのが楽しみ」と話していた。
奥田さんは、8日に帰国し、9日から3日間は鶴岡で待機期間を過ごすという。『ゆで論』(250ページ、税込み5665円)は、アルケッチァーノなどで扱っている。