2022年(令和4年) 7月28日(木)付紙面より
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新田嘉一平田牧場グループ会長(88)=酒田市楢橋=が収集した美術コレクション「新田嘉一コレクション」を紹介する酒田市美術館常設展示室で25日、いずれも新田会長が所蔵する近・現代のフランス画壇を代表する画家8人の作品12点を集めた常設企画展「珠玉のフランス絵画を中心に」が始まった。新田会長は「こうして飾ると作品の良さは本当に分かる」と話している。
新田会長は昭和40年代から畜産技術の習得、自ら所有する競走馬の活躍を見るため多く渡仏。この際にパリや近郊にある美術館、ギャラリーを巡り、美術品への審美眼を養うとともに、作品を購入してきたという。
同美術館は1992年3月、新田会長が故森田茂画伯(文化勲章受章者、1907―2009年)の作品を中心に、これまで収集した絵画を市に寄贈したのが発端。これを機に市民の間で美術館建設の機運が高まり、97年に開館した。
コレクションには市に寄贈した以外にも国内外の巨匠の作品が並び今回、ベルナール・ビュフェ(1928―99年)、ベルナール・カトラン(1919―2004年)、モーリス・ユトリロ(1883―1955年)ら近・現代のフランス画壇を代表する作家の画業を紹介しようと、同美術館と共に企画した。
会場に入ってすぐに目につくのは、正面に展示されているビュフェの油彩「アナベル」(60号)。妻をモチーフとした中期(1960年)の作品で、余分な線を切り捨てて輪郭を取った描写線を強調。時代を先取りした画風が見る人を圧倒する。並んで展示されているカトランの油彩「白いばらの床の間」は120号の大作。得意の題材を淡い色使いながら鮮やかに表現しており、背景の白さが印象的。
初日に会場を訪れた新田会長は「これらの作家の作品は美術館が所蔵しているため、市場に出回ることは少なく現在、求めようと思ってもかなわない。ルーブル美術館まで行くことなく、ここ酒田で、フランスの巨匠の作品を楽しんでほしい。『地域の宝』として多くの人、特に若い世代から鑑賞してもらいたい」と話した。展示は10月16日(日)まで。