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2023年(令和5年) 2月22日(水)付紙面より

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なぜ平和に背を向け続けるのか

 正当性のない理不尽なロシアによる侵攻で、ウクライナ国民はこの一年、生き地獄の中で耐えてきた。学校や病院、インフラ施設までも無差別に攻撃して破壊、多くの一般市民を殺害した。ロシアは民主主義や国際法に背を向け、人さらいのようにウクライナの子どもを連行し、ロシア化に洗脳しようとしているという。「人の道」に外れる、決して許されるものではない。

 24日で侵攻から1年を機に、ロシアは大規模攻撃を始めているという。ウクライナの強固な反撃で戦果が上がらないためで、戦争の長期化と激化で被害の拡大が懸念される。終結にはロシアが引き下がるしかないが、その兆しが見えない。

◇      ◇

 戦争の怖さは、ロシア国内で国民に正しい情報が伝えられていないことだ。ロシアの独立系世論調査機関によれば、侵攻を支持する国民が7割以上に上る。プーチン政権は、侵攻をウクライナに住む親ロシア派住民を守るための「特別軍事作戦」であり「戦争」ではないと発表し、国営放送が伝えるプロパガンダ(政府の意図的な思想宣伝)によって、国民に信じ込ませている。独裁政権下で報道の自由も抑えられ、国民はウクライナで起きている悲惨な真実を知る事ができない。

 一方、ロシア国外に脱出した若者も多いという。その数は100万人とも200万人ともいわれる。何らかの方法で正しい情報を知って侵攻に反対し、併せて軍に召集されるのを逃れるための国外脱出とされる。侵攻に異論を唱える人たちが多数政府に拘束され、半ば見せしめ的に戦場に送られるケースもあるという。これも言論の自由がない独裁国家の怖さだ。

 侵攻後の1年間で、ロシア軍兵士と民間軍事会社戦闘員の死傷者数は20万人近くに達し、うち死者は4?6万人と推計されている。予備役の部分的動員を始めた昨年9月以降に死傷者が急増したとされるのは、訓練が不十分なまま戦場に送られたためという。死傷した戦闘員だけでなく、その家族も犠牲者と言える。独裁者の野心で尊い命を奪っていい道理はどこにもない。

◇      ◇

 北大西洋条約機構(NATO)加盟国は、武器供与などでウクライナを支援している。一方、ロシアにエネルギーを頼っている欧州各国の中には、支援疲れから早期の終戦・停戦を望む声も出ているという。しかし、それでは武力行使で独立国家の領土を奪うことを認めることになる。ロシアの侵略戦争を許せば民主主義社会が崩れてしまう。

 ウクライナ国内に仕掛けられた地雷の撤去には数十年を要し、小学校の子どもたちが核攻撃に備え、レインコートを防護服代わりにして避難訓練している様子は尋常でない。国際法を否定し、正当性のない侵略を続けるプーチン大統領は、直ちに侵攻をやめなければならない。

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