2023年(令和5年) 2月23日(木)付紙面より
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鶴岡市が進める「デジタル人材育成支援事業」の報告会が21日、鶴岡市役所別棟2号館で開かれた。支援を受けた鶴岡工業高等専門学校の5年生が、中小河川の水位を観測するシステムや、鳥獣による農作物被害の対策についてそれぞれの取り組みを報告した。
同事業は、デジタルを活用した地域課題を解決する仕組み開発を教材とし、学生の技術力向上を図るため本年度新たに始まった。学生の地元定着やその技術に基づいて事業を創出する企業を地域が支援するもの。
鶴岡高専は今回、機械コースの矢吹益久准教授と情報コースのザビル・サラウッディン・ムハマド・サリム教授の2研究室から5年生グループが市の補助金による助成を受け、それぞれテーマを決めて研究調査に取り組んできた。
報告会には皆川治市長など市関係者と鶴岡高専の学生など合わせて約20人が出席。矢吹研究室の学生5人が「中小河川用水位モニタリングシステムの開発」、ザビル研究室の学生3人が「IoTと機械学習を用いた畑への動物の侵入を検知する技術の開発」と題し、それぞれ報告した。
矢吹研究室の5人は2020年7月に発生した県内の豪雨災害で、鶴岡市内でも70超の住家、非住家が浸水被害にあったことを挙げ、「地域住民のため河川の水位状況をリアルタイムで把握することが求められる」と提言。
国土交通省が設置している水位計は1台約100万円とコストがかかることを踏まえ、低コストの水位モニタリングシステムを開発し、鶴岡市内の青龍寺川に設置して測定結果を基に、豪雨災害の際に活用できる河川氾濫予測モデルの作成に挑戦した。
結果として「システムは1台約7万2000円で開発し、川沿いの3地点へ設置した。昨年11月以降の測定で、降水量と水位の変化は性質的に一致することや、上流と下流で水位のピークに時差があった。予測モデルの作成により氾濫の可能性が高い下流への避難勧告に役立つのでは」と説明した。
一方、ザビル研究室の3人は人工知能を搭載したカメラが動く物体を撮影し、動物を検知した場合は畑などの利用者へ通知するシステムの概要を解説。「人工知能が学習を重ね、写真からサルを発見することが可能になった。今後は撮影端末を農地の近くに設置し、野生動物の出現を通知するシステムの構築を目指す」と述べた。