2023年(令和5年) 2月25日(土)付紙面より
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鶴岡サイエンスパークの最新の動きを紹介する「市民のための生命科学入門講座」が21日、鶴岡市覚岸寺の市先端研究産業支援センター・レクチャーホールで開かれた。定年で3月末に退任する慶應義塾大先端生命科学研究所の冨田勝所長が講演し、「『先端研は今後、どのような方向に進むのか』とよく聞かれる。それは私も分からない。だから面白いのではないか」と語った。
冨田さんは2001年の先端研開設以来、所長を務め、先端研などが立地する鶴岡サイエンスパークを、メタボローム解析を核にした世界最先端のバイオ研究拠点に導いてきた。「鶴岡サイエンスパークの最新動向」と題して講演し、先端研発ベンチャー企業の現況を紹介。「サイエンスパークには現在、ベンチャー各社の従業員と先端研の教職員合わせて700人がいる。その家族も含めれば、鶴岡市の人口のおよそ1%にはなるだろう」とした。大手企業から社員の「鶴岡留学」を受け入れていることにも触れ、「出羽三山の精神文化など庄内には本物を見極めようとする本当の文化がある。そこを大企業も注目している」と述べた。
参加者からの質問を受け、所長退任後の活動について「自由な時間が増える。半年ぐらいはゆっくりと考えて、自分が面白いと思えることでかつ世の中に役立つことを探し出せるよう試行錯誤したい」と語った。
講座では冨田所長のほか、納豆菌粉を活用した食品開発に取り組む先端研発バイオベンチャー・フェルメクテス(大橋由明社長)のアドバイザー・長内あや愛さん(食文化研究家)が「食文化の普及過程から考える新時代の食糧」、三川中出身で鶴岡中央高時代に先端研の研究助手を務めた経歴を持つ、先端研の渡部康羽研究員が「地元庄内で探る生き物が操る糸の可能性」と題して講演した。
講座は同市の致道ライブラリーが主催し、会場とオンラインを合わせ約100人が参加した。