2023年(令和5年) 2月25日(土)付紙面より
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再生可能エネルギーやカーボンニュートラルなどを軸に、地域の在り方を考える東北公益文科大学地域連携シンポジウムが先頃、同大で開かれた。柱となったテーマは「庄内地域のこれからと再生可能エネルギーの役割」。風力発電は政府が将来の重要なエネルギーに位置付けている。庄内でも導入が進んでおり、さらなる進展の可能性などを探った。
公益大が初めて企画したシンポジウムには約550人が参加して会場は満席。庄内の未来はどうあるべきかという課題への関心の高さをうかがわせ、新田嘉一公益大理事長も「連携を深め、一緒になって将来を考え、行動してこそ地域の発展がある」と、シンポジウムへの期待を述べた。
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シンポジウムの大きなテーマになった再生可能エネルギー。庄内では酒田港一帯や庄内町、鶴岡市の一部で既に風車が稼働している。新たに洋上風力発電導入が計画されている遊佐町沖は、導入の「有望区域」から「促進区域」の指定を目指している。酒田沖も導入に向けた想定海域を設けており、地元の意見をまとめて国に情報を提供し、遊佐沖同様の有望な区域に一段格上げしたい考えだ。
庄内は風力発電では全国の先駆けだった。1988?89年に政府は「ふるさと創生事業」を実施。全市区町村に自ら考えて地域づくりにつながる事業を起こすようにと、一律1億円を交付した。旧立川町はこの交付金で小規模な風力発電3基を導入、全国の中でも数少ない事業の成功例になった。当時の町長が「風が吹けば金がもうかる」と、清川ダシを利用する発想が実ったものだった。
環境への配慮と世界のエネルギー事情を考えれば、自然からの恵みとなる再エネは、積極的に導入しなければならない。日本海沿岸海域には風力発電の適地が多く、秋田県では能代市沖と秋田港沖で商業運転が始まっている。酒田港一帯の風力発電は陸上部への設置だが、洋上に設置するとなれば事業の可能性が大きく広がる。そのためには、漁業関係者の理解が欠かせない。
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公益社団法人酒田法人会は昨年末、酒田市と遊佐町に「洋上風力発電の推進」などを求める提言書を提出している。洋上風力発電は地域の活性化に寄与するとして、積極的に導入する必要性からの提言だ。
鶴岡市では加茂地区の住民らが風車設置が生活にどのような影響があるかなどを考えるつどいを開いた。同市では出羽三山への大規模風力発電計画が中止になり、加茂坂トンネル南西部の山に風車設置が計画されたが、環境への影響があることで鶴岡市が事業の中止を事業者側に申し入れた。庄内でも地域によって、風力発電導入に若干の温度差がある。だが、問題があれば解決策を模索しながら、再エネを前向きに捉えていただきたい。