2023年(令和5年) 3月24日(金)付紙面より
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文化活動に貢献した人へ贈られる吉川英治文化賞を受賞した鶴岡市立加茂水族館名誉館長の村上龍男さん(83)=同市羽黒町野荒町=が21日、同館で記者会見を行った。「83歳にもなってこんな栄誉ある賞をもらえると思わなかった。長く水族館に関われたのは大勢の人が協力してくれたから。そうした人たちの代表として賞をもらったものと考えている」と話し、半世紀近くに及んだ館長としての思い出を振り返った。
同館の円形大水槽前で行われた記者会見で村上さんは、1997年に旧水族館で初めてサカサクラゲを展示したことを機に、クラゲ特化の水族館へ転換したことについて「当初は頭が固かったためアイデアが出なかった。『クラゲを食べる会』を開催したところ、大勢の人が面白がってくれて集客につながった。柔軟な考え方が大事と知った」と振り返った。「?食べる会」で生まれたクラゲアイスは、20年近く販売が続くロングセラーとなっている。
また、2005年にモントレー水族館(米国)の17種類を抜き、21種類のクラゲを展示して展示種類数世界一となったものの、06年は客足が減少。08年、ノーベル化学賞を受賞した故下村脩博士の研究材料・オワンクラゲを当時は国内で唯一展示していたことから来館者が急増した。09年には記録が残る1968年以来約40年ぶりに来館者数が20万人を超えた。
村上さんは「新しい水族館のため来場者数を増やしたかった。下村博士を一日館長として招待すれば大きな話題になるだろうと考え、何回も博士をお誘いし2010年4月に実現した。博士が車から降り、旧水族館の前に姿を見せた時、達成感から自然に万歳した」と話した。
今後について「今回の受賞が水族館にとって少しでも励みとなれば。加茂水族館が世界に認められるようサポートを続けていきたい」と話し、「クラゲと出会う前は誇るものが何もない小さな水族館だった。ここまで評価されるようになったことが何よりもうれしい」と感慨深げに語った。
村上さんは1967年、館長に就任。閉館寸前の水族館を「世界一のクラゲ水族館」に立て直した功績が高く評価され、今回の受賞につながった。