2023年(令和5年) 4月15日(土)付紙面より
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鶴岡市千安京田のいこいの村森林公園でソメイヨシノとチューリップがほぼ同じ時期に咲いた。チューリップは以前、桜が散った後の大型連休前に見頃を迎えていたが、ともに花期が早まる傾向が続いている。植物について調べている専門家は「温暖化が背景として考えられるだけに『きれいだ』とは素直に喜べない。環境に敏感な植物が人間社会に警鐘を鳴らしている気がする」と話している。
鶴岡市公園緑地係によると鶴岡公園の桜の開花(5年ごと)は2000年が4月16日、05年が18日、10年が13日、15年が6日、20年が3日。23年間の平均は10日で、2015年以降は4月10日より早く咲いた年が多い。今年の開花宣言は3月31日。公園北側の新たな基準木で観測を始めて以来、3月中に咲いたのは初となった。
いこいの村森林公園では今月初めにソメイヨシノが咲き始め、その後間もなくしてチューリップが花びらを広げた。桜はほぼ散ったが、10日から12日にかけて満開となったソメイヨシノと赤や黄色といったチューリップが「競演」する光景が見られた。庄内チューリップ倶楽部の中村恵二事務局長(68)=鶴岡市大宝寺町=は「チューリップが咲いたのは8日。品種によって早咲きや遅咲きがあるが倶楽部が管理するようになってから桜と同じ時期に咲いたのは初めて」と話す。
いこいの村森林公園に限ったことではない。ほかの広い地域で植物の開花が早まっていることを専門家が指摘する。
環境省の希少動植物種保存推進委員で鶴岡自然調査会代表の水野重紀さん(83)=鶴岡市双葉町=の調査では鶴岡市の高館山に自生する「オクチョウジザクラ」が今年3月17日に開花しているのを確認した。
水野さんは「例年より10日早い。特にここ数年、植物全般の開花が早くなっている。チョウの『ウラギンシジミ』は大山公園の枯れ草の中で成虫のまま越冬していることが確かめられた。『モンキアゲハ』も5月下旬に成虫となって見かけられるようになりサナギの状態で冬を越している可能性が高い。いずれも過去にはなかったこと」と現状を説明する。
年々、開花が早まる自然界の植物。今後、鶴岡公園や酒田市の日和山公園の桜の開花宣言は3月下旬が「通例」となる時代が来るのかもしれない。