2023年(令和5年) 5月13日(土)付紙面より
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庄内三大祭りが迫った。20日は港町文化とにぎわいを伝える「酒田まつり」、25日は奇祭「化けものまつり」で有名な鶴岡市の天神祭、来月5日は神社の裏山に住む化け物を退治した「めっけ犬」が主役の同市の大山犬祭りがある。新型コロナウイルス感染症が完全に収束していないが、行動制限は解かれた。三大祭りがにぎわい、経済が活力を取り戻し、人々の心に元気をもたらしてほしい。
庄内三大祭りの季節は、庄内がひと際華やぐ。この3年間、三大祭りはコロナ禍のため規模縮小や呼び物のパレードなどの中止を余儀なくされた。今年は例年の伝統行事に加えて、「酒田歴史まつり」という、新しいイベントも用意された。3年分の“辛抱”を取り戻す祭りになりそうだ。
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祭りは各神社に伝わる神事。同時に人々の娯楽であり、経済活動そのものとも言える。住民にとっての心のよりどころになり、子どもたちも、親世代が昔からの伝統を受け継いでいる様子を見ることで、郷土愛を育む機会になる。見るだけでなく、子どもが実際に参加することで成り立つのも祭り。学校では得られない体験の機会になる。
酒田まつりは慶長14(1609)年の日枝神社の例大祭「山王祭り」が始まり。1976年の酒田大火後、街の復興を願って「酒田まつり」に改められ、厄除けのシンボル・獅子頭が登場した。化けものまつりは学問の神様・菅原道真公(845?903)が、京都から九州の太宰府に配流される際、道真公を慕う人々が顔を隠し、酒を酌み交わして別れを惜しんだという言い伝えが残る。大山犬祭りも300年の歴史がある。椙尾神社の裏山の化け物のムジナ(タヌキとも)をメッケ犬が退治し、村人を助けたという伝説に由来する。
祭りは地域の伝統行事として代々受け継がれてきた。娯楽が少なかった昔、子どもたちは祭りばやしに心を躍らせ、小遣い銭を握りしめて道沿いに並ぶ露店の品々を見て回った。現代の大型商業施設では、そのような素朴さは得られない、心に焼き付く祭りでの体験を通し、郷土愛を育んだ。
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今年の酒田まつりは、鳥海山の高さに見立てた高さ22・36メートルの「立て山鉾」が老朽化のため解体され、代わって北前船時代の料亭文化を伝える「花魁(おいらん)道中」で祭りを盛り上げる。化けものまつりの「天神パレード」では、親子化けもの、子供みこし、高校生のマーチングパレードなど、多くの小中高校生が参加する。
少子化の中、首都圏への人口の偏りに歯止めがかからない。政府は若い世代をターゲットに地方移住政策を打ち出している。Uターンであってもいい。首都圏で暮らす人たちの心に祭りばやしが届き、「田舎に戻ろうか」という気持ちが湧いてくれることを願いたい。祭りには、そうした力もあることを信じたい。