2023年(令和5年) 5月17日(水)付紙面より
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春の「交通安全県民運動」の実施中だ。最大の目標は「交通死亡事故ゼロ」。かつて全国の交通事故の死者が年間1万人を超え「交通戦争」という言葉も生まれた。警察庁のまとめで2022年の交通事故死者が2610人まで減ったのは、道路環境や車両の安全対策が進められ、交通安全意識の高まりによる。その意識をより高めていかなければならない。
一方、高齢者の運転に起因する事故防止が社会問題になっている。アクセルとブレーキの踏み間違いで大事故につながったという話はよく聞く。年を取れば瞬間的な判断力が衰えていくことがあり、運転免許証自主返納が話題になるが、高齢者の日常行動の“足”の確保も大きな課題だ。
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高齢者の車がスーパーの店内などに突っ込んだというニュースを聞く。いざという時、正常な判断行動ができるかなどを知るため、高齢者の免許更新時の講習で認知機能検査や、実際に教習所のコースでの運転講習もある。段差の前で停車し、アクセルを強く踏んで段差に乗り上げた瞬間にブレーキを踏んで停車させる講習も、とっさの判断力と動作を調べるためだ。
運転免許証自主返納が呼び掛けられて久しい。自主返納を促すため、高齢運転者に車を運転しない生活を1カ月体験してもらう「お試し自主返納」をしている県もあるという。県内各地の商業施設などでの割引サービスの特典、電車の1日乗車券割引購入、一部の自治体では乗り合いタクシーの回数券の無料配布もあるという。ただ、乗車券割引やタクシー回数券配布には制限があるだろう。
鶴岡市の庄交コーポレーションと庄内交通は、昨年10月から市内循環バスの運行経路とダイヤを大幅に改めた。循環バスを12人乗りのワゴン車にし、従来の1日12便から48便に、バス停は58カ所から80カ所に増やした。バス停の間隔を短くすることで高齢者らの行動を支えようという狙いだ。地方の公共交通機関は人口減少で経営は苦しい。そんな中で、運行形態の見直しには利便性の向上で“買い物弱者”の足になろうとの発想がある。
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高齢者に起因する事故が増えていることは事実としても、地方では車なしでは生活が成り立たない事情も多い。自宅の近隣にスーパー、医院などがない人はどうすればいいのだろうか。道路事情や公共交通機関がくまなく走っていないとなれば、車に頼らざるを得ないのも現状であろう。
4月から改正道路交通法で、自転車に乗る人もヘルメット着用が努力義務化された。もちろん大人も子どもも。自転車事故による死傷者の約6割がヘルメットを着用していなかったため、頭部に重い負傷を負っているという。自転車に乗る人は、我が身を守る身近な存在がヘルメットということを、心に命じたい。