2023年(令和5年) 5月18日(木)付紙面より
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東北公益文科大学(酒田市)の第3回地域連携シンポジウム「地域モビリティとサステナブルシティ」が16日、酒田市の公益大公益ホールで開かれ、有識者3人がパネル討議を展開。再生可能エネルギーの活用を視野に入れた新たな地域交通の可能性、公共交通を活用した持続可能なまちづくりについて考察した。
経済・産業界との連携を深め、これからの地域産業の姿をデザインするとともに、その実現に必要なものを探るため、公益大が今年2月からシリーズで開催している。
今回は、小林剛也県総務部長の進行で庄交コーポレーション(鶴岡市)の國井英夫社長、電動モビリティシステム専門職大学(飯豊町)の清水浩学長(慶應義塾大学名誉教授)、公益大の神田直弥学長が意見を交わし、約130人が聴講した。
國井社長は、同社が昨年10月から鶴岡市内で展開している循環バス拡大事業について解説。バス停留所をそれまでの48カ所から80カ所に増やし、12人乗り新車両を導入、運行路線見直しを図った結果、利用者が3・3倍に増加したことを紹介し、「安く提供できる公共交通はバス以外になく、利用する市民の立場により近づいていくことが大事。市街地を訪れる観光客の足にもなる。バス利用環境は年々出来上がっていく」と述べた。
「電気自動車(EV)」「自動運転」を集中して学び、研究する今春に開学したモビリティ大学の清水学長は冒頭、「効率の良いものは普及するという思いで40年前にEVの研究を始めた。再生可能エネルギーを活用することでもっと効果が出る」と。そして、自動運転技術の隊列走行と小型EVを組み合わせて需要に応じた利用を行う「LRTT」の概念について説明し、國井社長に共同研究を呼び掛けた。
交通心理学、人間工学が専門の神田学長は、車利用の功罪について説明。デメリットとして▽高齢ドライバー問題▽都市のスプロール化▽環境負荷の増大―などを挙げ、「免許人口当たりの事故件数をみると、高齢になるにつれて死亡事故が増える傾向のある。これは公共交通、特にバスの利用で解決できる」と。あらゆる移動手段のうち車から排出される温室効果ガスが最も多いことに触れ、「脱炭素型ライフスタイルの観点で最も効果があるのが公共交通の活用。何も高齢者に限ったことではなく、われわれ全てが考えていかなければならないこと」と指摘した。
小林部長は今回のシンポジウムを踏まえ、「公益大が『知の交流と拠点』としての役割を果たすことに期待したい」と。開会に先立ち上野隆一公益大理事・後援会長は「公益を掲げる本学が地域との連携を図りながら、課題解決に向けた議論を行い、未来への展望を地域と共有することがシンポジウムの狙い。地域創生に役立つことに期待」とあいさつした。