2023年(令和5年) 6月10日(土)付紙面より
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夏本番を思わせるほど気温が上がっている。これから先の季節はエアコンが欠かせなくなる。ところが電力会社の電気料金が、6月使用分から値上がりした。東北電力の値上げ幅は24%、標準家庭では5月に比べて1621円上がって7833円になる。普段の生活で電気を節約するにも限界があるとなれば、今年の夏は殊更に暑さを感じることになりそうだ。
日本のエネルギー事情は、原油・天然ガス輸入による火力発電への依存度が高い。このためウクライナ危機や円安に起因した燃料価格高騰の影響を強く受けている。今後、再生可能エネルギーをいかにして増やすかが大きな課題とされ、庄内沖での洋上風力発電導入も注目されている。
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気象庁は、今年は暑い夏になると予想している。関東では5月というのに35度以上の猛暑日になった地域、30度超の真夏日記録も珍しくない。この状態ではこの先、急な暑さによる熱中症が気掛かりだ。気象予報などでは「迷わずエアコンの適切な使用を」と呼び掛けている。しかし、救急搬送された高齢者の中にはエアコンがあっても使っていなかったケースもあるという。どうしても「エアコン=電気代が高い」という意識が働くのかもしれない。
毎月の電力料金は今年1月以降、政府が実施した負担軽減策、物価対策などで低く抑えられてきた。しかし今月分からの値上げに続いて、9月以降は政府の補助が減らされる見通しとされ、家庭の負担が増すことになりそうだ。食品類の値上げも相次いでいる。電気も食品も普段の暮らしに欠かせない存在だけに、個々の値上げの積み重ねによる影響は大きい。
エネルギー源の多くを輸入に頼る中、再生エネ導入への期待が高まっている。庄内でも陸上風力、太陽光、バイオマス発電が既に稼働している。今後は遊佐沖・酒田沖への建設が議論されている洋上風力発電も注視される。秋田県沖では洋上風力発電の営業運転が始まっている。庄内沖への建設も一歩一歩着実に進む。エネルギー事情を考えれば再エネ導入は避けられないのではないだろうか。
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気象庁の、6?8月の気温は平年並みか高いとの予想だ。厳しい暑さの中で熱中症にならないためには、1時間に1回程度水分を補給することが肝心という。併せて、エアコンは我慢してまで使用を控えることのないようにしたい。高齢者は特に注意が必要だ。
今までは「あって当たり前」のように考えてきた電気だが、いざ値上げされるとなると“見えない存在から見える存在”になった現実感がある。暑さをしのぎ、熱中症にならないためにも、家の中で電気製品の使用をやりくりし、賢く電気を使いながら、夏を乗り切りたい。それによって環境にも優しいことになる。