2023年(令和5年) 6月13日(火)付紙面より
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鶴岡市東岩本の不動山本明寺(大坂信快住職)で11日、庄内地区の寺院では珍しい山伏修験の行事「火渡り」が行われた。同寺開祖で、現存する湯殿山系即身仏としては最も古い本明海上人の生誕400年の節目の年とあり、大勢の信者が身体堅固や家内安全を祈りながら火の上を渡った。
庄内では古くから月山、羽黒山、湯殿山の出羽三山で山岳修験が受け継がれてきた。江戸時代まで羽黒山、月山は天台宗系統に、湯殿山は真言宗系統にそれぞれ属していた。明治期の神仏分離令と修験道廃止令により寺禄を失い神社となったが、現在も一部は寺院のまま修験道を受け継いでいる。
湯殿山系真言宗の流れをくむ本明寺には、約340年前の1683(天和3)年に即身仏となった本明海宗和上人が祭られており、12年に1度の丑歳(うしどし)御縁年に合わせて即身仏の衣替えを行う。衣替えの記念行事として薪を組み上げて柴をたく柴灯護摩(さいとうごま)が行われており、2009年から火渡り行事も同時に実施している。今回は本明海上人の生誕400年に合わせ、2017年以来6年ぶりの火渡りとなった。
この日の午後2時過ぎ、地元住民など200人余りの信者が見守る中、大坂住職や山伏たちが長柄の斧や刀を用いて魔を払う護摩法が繰り広げられた。火が付けられた柴が燃え尽きる頃、薪ごと崩して火渡りが始まった。はだしで火の上を渡ることで自己の迷いの心を焼き、すべての物事を最後までやり抜く強い力を得るための修験の行という。
煙がくすぶる炭の上を山伏たちが渡り祭壇に一礼。続いて希望する信者が列を作り、手を合わせながら次々と火の上を渡った。
庄内を拠点に活動するユーチューバーのアフロりゅうじさん(30)=本名・難波竜次=も火渡りに挑戦。「火渡りを続けてきた先人や現在行事を継承する人たちなど、さまざまな思いを感じた。少し熱かったが自然と感謝の気持ちが湧いてきた」と話していた。また、余目三小2年の天野真聖君(8)は「足が速くなるよう願いながら渡った。熱かったけど我慢できた」と笑顔を見せていた。