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2023年(令和5年) 6月27日(火)付紙面より

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いま国際化が問われる時代 論説委員 小野 加州男

 出羽庄内国際村(鶴岡市伊勢原町)のワールドバザールが、6月10・11日の両日開催された。来場者が約1200人、ステージの出演者や模擬店出店者、運営ボランティアなど、合わせて1500人以上が集まる盛況となった。

 ワールドバザールは国際村最大の行事で知られるが、国際村の事業はこれだけではない。現在鶴岡市の外国人登録数は、800人を超えている。国別で多いのはベトナム、中国、フィリピン、韓国など。留学や就業、技能実習、結婚など来日理由は多様だ。人口比率はまだ1%に満たないが、一時的なインバウンドでなく、多くの外国人が隣人として暮らしている。

 この外国人に対する日常的な支援が国際村の主な業務だ。まず日本語教育の実施がある。外国人向けの日本語教室は全国至る所にあるが、学習する側に立って個別に日時を調整し、たとえ一人でも対応するのが国際村の特徴だ。オンラインでの利用者もいる。約40人の日本語指導ボランティアが教えているが、この指導者養成の研修も国際村が担当している。

 また日常生活でのコミュニティ通訳の活動も大切だ。日本語が不自由な外国人が、医療機関や官庁とのコミュニケーションが必要な場合に、14カ国語でサポートする。場合によっては行政機関と連携することもある。

 国際村を定期的に訪問している中京大学教養教育研究院(名古屋市)の渋谷努教授は、今年もワールドバザールに来場し「鶴岡市の規模の自治体で、国際交流のための独立した施設を持つのは、他に例を見ない」と評価する。また「これまでは外国人への支援が注目されてきたが、受け入れ側の日本人の啓発も必要」とも指摘する。庄内でも文化や宗教の違いによる多様化に、どう向き合って共生するかを試される時代になった。

 国際村の起源は1985年の国際青年年にさかのぼる。旧藤島町と旧羽黒町の有志が中心となって、庄内国際青年祭を企画した運動が、庄内全体に広がった。その拡大にアマゾン資料で知られる、山口吉彦・考子(なすこ)ご夫妻の力が寄与したことを忘れてはならない。庄内国際青年祭は1999年まで全15回開催された。

 この盛り上がりを受けて発足したのが国際村だ。初期は国際交流が主な業務だったが、次第に外国人の生活支援、相談、日本語教室など、現在の形に発展した。鶴岡市役所では住民登録の際、外国人向けにパンフレットを渡す。それで国際村を知って訪れる人も多い。

 国際化の流れとともに、庄内在住の外国人は増加し、国籍も多様化する。人口減少への対応として、外国人労働者の受け入れも進むだろう。一方、すでに長い間日本に居住している外国人、特に中国や韓国出身者の高齢化によって介護問題も浮上する。国際化とは複雑な側面を持つ。

 国際村の役割はますます重要になりそうだが、対応するスタッフ不足も課題だ。国際村の機能を活(い)かして、さまざまな団体が協力するシステムの構築が求められるのではないか。庄内がこれまで育ててきた国際交流の基盤を活かし、日本人も外国人も生き生きと暮らせる地域を目指したい。



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