2023年(令和5年) 7月1日(土)付紙面より
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高等教育の充実は地域から―というのだろう、全国で大学の公立化が進んでいる。酒田市の東北公益文科大学も、県や庄内5市町などで公立化・機能強化を検討している。県は公立化・機能強化に関する調査費を6月定例県議会に提出した補正予算案に盛り込み、吉村美栄子知事は「スピード感を持って関係者間の合意形成を図る」と述べた。
公益大は2001年の開学。日本の大学初の公益学も次第に浸透し、17?22年度は6年連続定員を超えた。23年度は若干定員を下回ったものの、海外留学への手厚い支援など特色ある教育内容への評価が高まり、存在感が定着しているのは確かだ。公益大の実績をさらに推し進め、定員確保のためにも公立化への道筋をしっかり立ててもらいたい。
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公益大の公立化については、庄内5市町に加え、酒田・鶴岡両商工会議所、庄内地区商工会広域連携協議会の、庄内経済3団体も早期実現を県に要望している。2月の県議会で吉村知事は「今後の少子化に伴い、学生確保は大学間での競争の激化が予想される。公益大は地元高校生の県内進学に対する意欲を喚起し、時代の要求に応じた人材育成につなげたい」と、公益大の公立化・機能強化の必要を語っている。
文部科学省によれば、1989年以降、全国では公立大学の割合が増えている。実数では同年の公立大39大学(学生数約6万人)が、22年5月には99大学(同16万人)になった。丸山至酒田市長も昨年12月の記者会見で「少子化で、特に社会科学系の大学は学生確保が厳しさを増している」として、公益大の公立化による教育の充実は喫緊の課題と述べている。
公益大の公立化の必要性は県、庄内の5市町と経済界も共通した認識だ。県も本年度に公立化・機能強化に向けて検討する「高等教育政策・学事文書課」を新設、6月県議会に1700万円の調査費を提案する一方、公立大法人が運営する国際教養大学(秋田市・03年開学)と会津大学(福島県会津若松市、1993年開学)を視察している。公益大も公立化を視野に国際教養学科(仮称)の25年度新設を目指している。
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公立化では庄内5市町と県の意見も交わされ、市町側から「少子化が進む中、公立化しなければ学校経営が難しい」、県から「全国からの志願者数と地元就職率の問題、将来的にわたって自治体運営にどのような影響を及ぼすか見極めたい」などの意見が出され、解決しなければならない課題もある。
少子高齢化の中で、大都市圏や地方を問わず幅広い分野で活躍できる人材育成が求められているという。そうした中で地方大学は「知の拠点」となって、地域ならではの人材を育て、地元に定着してもらって地域経済と社会を支える力になってもらう。公益大の公立化は、そのような社会形成につながるのではないか。