2023年(令和5年) 7月7日(金)付紙面より
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マイナンバーカードを巡るトラブルがあとを絶たない。健康保険証や公金受取口座の登録ミスなどが続き、不信感からカード返納を呼びかける人たちも現れている。
トラブル続きの根源は何か、実はマイナンバーカードのサンプルに象徴されるように思う。どこの自治体も同じサンプルを使っているので、中央官庁で作成したと思われるが、住所欄に「◇丁目○番地▽▽号」と書いてあるのが問題だ。
住所の表示方法には、「地番」と「住居表示」の2種類がある。昔は日本中すべて地番で表しており、住居表示が始まったのは1962年からだ。現在はこの地番と住居表示が、ひとつの市町村内で混ざって使われている。もちろん山形県も。
簡単にいえば地番は土地につけた番号で、住居表示は建物につけた番号だ。だから家や建物ができて市街地化が進んだところから、順番に住居表示が実施されている。田畑や山林が多く家が少ない場所は住居表示はされていない。
そして肝心な点は、地番で住所を表すとき正式には「○○番地▽▽」と書く。一方、住居表示は「○○番▽▽号」と書く。たとえば鶴岡市役所の住所は、鶴岡市馬場町9番25号であり、9番地25ではない。ただし日常的には簡略化して数字だけで、馬場町9―25と書く場合も多い。
もうお分かりと思う。「○番地▽▽号」という住所の表示は間違いだ。地番と住居表示を混同しているので、こんな書き方の住所は一般的にはない。役所が初歩的なミスに気づかないのか、または気づいても知らん顔しているのか、サンプルが誤りとはあきれた話だ。
この間違ったサンプルが堂々とまかり通る背景に、マイナンバー制度の問題が透けて見える。個別のトラブルの原因はあるだろうが、これほど続いて起こるのは、根本的な行政組織のあり方や、業務の仕組みに根ざすのではないか。
「新しい酒は新しい革袋に盛れ」の例えもある。まず役所が自らを改革しなければ、デジタル化だけを急いでも、国民が満足する制度にはならないだろう。