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2023年(令和5年) 7月8日(土)付紙面より

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一日一題 マイナカード返納が増えている

 政府が右往左往している―。マイナンバーカードで公金受取口座に別人が登録されるなど、相次ぐトラブルについにカードを自主返納する動きとなり、酒田、鶴岡両市でも計11人が自主返納した。「個人情報の漏えいが不安」などが理由のようだ。国会は5日、衆院で閉会中審査を開いたが収拾のめどが立たない。政府の不手際に国民の信頼が揺らいでいる。

 岸田文雄首相は省庁横断の「マイナンバー情報総点検本部」を設置、8月上旬まで中間報告を示すよう指示した。一方、河野太郎デジタル担当大臣が「マイナカードの名称変更」に言及し、健康保険証との一体化問題もあって与野党の論戦は平行線。マイナカードを巡る混乱は当分続きそうだ。

 酒田市では、マイナカードに関してのトラブルは確認されていないが、記者会見した丸山至市長は「行政業務の効率化と市民生活の利便性を高める点でデジタル化は必要とされる仕組みだと思う。ただ、制度運用上の不手際が市民の不安を招いている。政府には不安を払しょくするよう努力してもらいたい」と語った。

 「本人確認書類になる」「コンビニで各種証明書が入手できる」など、いいことづくめを前面に出したマイナカードは、住民票を持つ国民一人一人に固有の番号を割り当て、行政の効率化、国民の利便性を高めることを狙った制度だ。ところがカードに他人の情報が登録されたりするミスが相次ぎ、国民の疑心暗鬼を招いて自主返納の動きまで発展した。

 トラブルは、登録事務を担う自治体などの態勢が整わないのに、普及を急いだのが原因ではないか。芳しくない登録申請に、政府は最大2万ポイントを付与する策で取得率アップに躍起になった。カード普及を優先するあまり、現場の事務作業過程でのミス防止策がおろそかになった感は否めない。「任意」でありながら、現在の紙の健康保険証を廃止してマイナカードに一本化する、運転免許証と一体化する、公的年金受取口座をひも付けするとなっては強制に近く、不信感につながっている。

 自主返納の取り扱いも不思議だ。所定の書類に名前や住所を書いて自治体に提出するだけでカードを返納でき、しかも返納してもポイントの返還は必要ないとされる。これでは何のために制度導入に躍起になったのか、政府の姿勢が問われる。カードがぜひ必要な物であれば、国民の誰もが納得するものでなければならないし、運用当初からつまづきなど許されなかったはずだ。

 閉会中審査は衆院に続き、参院でも予定されている。与党内からは問題収拾が長引けば選挙に響くとの声も聞かれるというが、国民の生活に政局を絡ませるような次元の考えなど許されない。不安がなく安心して持っていることができるカードにし、国民の信頼を得ることが最優先課題だ。

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