2023年(令和5年) 7月16日(日)付紙面より
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鶴岡市馬町の市自然学習交流館ほとりあは、ラムサール条約登録湿地・大山下池の泥の中に含まれる埋土種子を活用し、ジュンサイの発芽に約60年ぶりに成功した。
ジュンサイはスイレン科の浮葉植物。独特のぬめりを持つ若葉や茎は日本料理の食材として利用されている。下池では江戸時代から1953年ごろまで地元組合が収穫しており、その風景は大山の初夏を象徴するものだったという。池の活用法の変化に伴う水質悪化が一因となり、55年ごろに下池のジュンサイは絶滅したものとされてきた。
ほとりあでは埋土種子から水生植物の再生を図ろうと2021年6月、経団連自然保護基金の助成を受け、下池の泥を重機で採取し、大型水槽などにまいた。以降観測を続けてきたところ、翌年7月には種子が発芽し、水槽内に3株が出現。今年の6月には開花し、種子ができたという。
ほとりあ学芸員の上山剛司さん(41)は「発芽に適した日射、水深、水温など幸運も重なり、水質環境を整えることができた。子どもたちがジュンサイの触感を体験したり、60年前と現在の池の環境のちがいを学習するための教材として活用していければ」と話した。
【埋土種子】落ち葉の下や土の中に留まり何年も生き続け、伐採などのきっかけで発芽する種子。発芽に適さない環境では発芽せずに機会を待ち、休眠状態になるという。