2023年(令和5年) 7月22日(土)付紙面より
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親も子どももどのように過ごしたらいいかと頭を悩ますのが夏休み。子どもは学校という場から離れてほぼ1カ月の長期休暇。いつもの生活パターンが変わって気が緩みがちにならないだろうか。夏休みに、なかなか見つからない“正解”の過ごし方を探し求める。毎年繰り返される宿題でもある。
今年は「生成AI(人工知能)」に対し、学校(児童・生徒も)がどのように向き合うかという新しい問題も出てきた。文部科学省も「創作や芸術活動で安易に生成AIを使わない」などとする指針を示している。宿題でAIを使うケースがあるかもしれない。しかし頼りにせず、子どもの主体性ある学びこそ大事にしたい。
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夏休みは、学校で管理される生活から自分で日課を決め、自由に使える時間を設けて勉強以外の何かをする。未知のことに挑戦すれば失敗がある。しかし、失敗から学ぶこともある。失敗を恐れず、そのときにしかできない物事に挑戦する時間をつくることができるのも夏休み。勉強や遊びの時間配分を上手に工夫することが夏休みを乗り切るコツだ。
親子で頭を痛めるのが自由研究。「自由」という名は付いていても「宿題」の一つだから、誰もが何かに取り組まねばならない。学校で渡される宿題が「正解」を求めて取り組むものだとすれば、自由研究はそれこそ「自由」な子どもの発想力が問われる。自由研究は「完成した形」「見た目の良さ」「出来栄え」より、いかに考えを巡らし、工夫を凝らしたかという過程が見えることこそが大事ではないかと思う。
ところが、書店をのぞいたところ自由研究のヒントが得られる本が数多く並んでいる。何に挑戦しようかと頭を痛めている親子にとっては助け舟になりそうだが、似通った研究が多く提出されたら、先生も弱ってしまいそうだ。身近な疑問を自分なりに調べ「何のための工夫か」という研究の狙いが分かるのが、本来の自由研究。決まった答えがない自由研究に時間をかけた経験は、将来必ず役に立つ。
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夏休みは自然と触れ合う好機でもある。自分の好きな事をしたり、普段はできないことに時間を割いて挑戦する。大人が良かれとしていることが、子どものためになっていないこともあろう。
AIが生活や教育の場に入り込んできていることで、夏休みも少しは様変わりするだろうか。しかし、子どもにとって肝心なことは、あれこれ頭を悩ませ、試行錯誤しながら自分なりに納得できる「正解」を求めること。子どもも大変だが、親も手を出さない「我慢」の時でもある。そして、ただぼーっとしている時間があってもいい。AIが思い付かない、意外な発想が浮かぶこともある。無理のない計画を立て、事故とけがのない夏休みを過ごしたい。