2023年(令和5年) 7月26日(水)付紙面より
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6月から7月にかけての本紙の報道で環境保全、環境美化、ボランティアなどに関する記事が目立った。6月は小学生がブナの植林、7月は▽魚の森づくりの植樹▽鶴岡公園をきれいにする活動▽山形の海洋ごみを考える活動▽クロマツ林の下刈り▽里山整備作業体験―などのほか、小学生が認知症を学ぶ講座もあった。どれも公共や社会生活を下支えし、郷土愛につながる事ばかり。
公益や奉仕活動の心は、自然と培われることもあろう。一方、地域・団体などの活動に参加し、そこから「社会のためになることが大切だ」という心が養われることもある。夏休みを前に、子どもたちが参加した取り組みから、「庄内には公益の心を醸成する下地がある」ことを感じる。
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ことわざの「情けは人の為ならず」。意味は、他人への思いやりのある行いは、やがて良い報いとして自分に返ってくる。人には親切心で接するものだという教え。そのことわざと子どもたちの社会活動への参加を結び付けることは、やや意味合いが異なるかもしれないが、少なくとも「活動したことの見返りが自分に戻ってくる」とは考えていないだろう。あるとすれば、汗を流したことで、少なからず社会の役に立ったことへの達成感を得たに違いない。
庄内は「公益の故郷」と呼ばれる。私財を投じ、社会に尽くした先人たちがいたことによる。酒田市に東北公益文科大学が開学する下地にもなった。現代でも社会貢献で名前を知られた人もいる。また、統合で閉校した鶴岡市の旧羽黒第四小に、40年間も図書費を贈り続けた仙台市在住の男性もいる。故郷と母校への恩返しだった。金額の多寡ではなく、人知れずコツコツと活動を続け、意志を貫くことこそが究極の「公益」であろうか。
ボランティアは「困った時はお互いさま」の心があってできる。自らの意思による「自発性」、行政の制度が行き届かない部分に取り組む「先駆性」、さらに対価を求めない「無償性」などがボランティアの心。冒頭に掲げた活動の多くが、そうしたボランティア精神に立っている。
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庄内砂丘のクロマツ林は先人が築いた宝。県庄内総合支庁は出羽庄内公益の森づくり事業で、森林ボランティアの力を得ている。作業はクロマツ林の下刈り、枯れ枝集め、ごみ拾いなど。行政が活動経費を助成することで、ボランティアという、小さな力の積み重ねで大きな力になる。
「うまく枝が切れると楽しい」「作業は大変だが、地域の人と一緒に作業できるのが楽しい」はボランティア参加者の声。その声からは、対価からは得られない「社会のためになっている」という満足感と、庄内に根差す公益の礎になっているとの気持ちが伝わってくる。その輪が大きく広がることを願いたい。