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2023年(令和5年) 8月2日(水)付紙面より

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揺れ動く二つの風力発電計画

 難しい問題だ。地球温暖化とエネルギー問題を考えれば推進に傾く。一方、景観や野生動物の生態系などを考えれば慎重にならざるを得ない。風力発電計画では、相いれない意見で分かれることが少なくない。鶴岡市と遊佐町で風力発電導入を巡って揺れ動いている。推進と慎重のどちらの言い分にも「道理」がある。一般の人も無関心ではいられない。

 鶴岡市加茂地区での計画に、市は事業者に中止を申し入れた。住民は「頭越しの申し入れ」に反発したが、皆川治市長は住民説明会で中止申し入れは撤回しないと強調した。遊佐沖での洋上風力発電計画では、住民が反対署名を町に提出した一方で、計画の調査や事務作業も進んでいる。

◇      ◇

 鶴岡市の風力発電計画は、東京の事業者が加茂地区南側の山中に高さ140~180メートルの風車を最大8基建設する。ところが、計画地北東側には国際的に重要な湿地を保全する「ラムサール条約」登録地の大山上池・下池があるとして、皆川市長は今年2月、事業者に計画の中止を申し入れた。「地域の活性化につながる」と期待を抱いていた地元には、市の中止申し入れは「寝耳に水」だった。

 遊佐町沖の洋上風力発電計画は、9月ごろには国の促進区域の指定を得、年末から年始にかけて、事業者公募が予定されている。町側は「風車が立ち並ぶ景観はいいと感じ、事業推進を望む声もある」とする。しかし「山形県鳥海山沖の巨大風車はいらない有志の会」が先ごろ(1)超低周波の住民への影響(2)景観を損なう―などを理由に、計画反対の署名簿を町に提出した。今後、影響を分かりやすく説明するチラシを町民に配布する予定という。

 環境問題などが関係する開発計画には、さまざまな意見が出るのは自然とも言える。計画に難色を示す人々も、地球温暖化対策とエネルギー問題を考えれば再生可能エネルギーの必要性は理解していると思われる。しかし、地元が宝としている景観や生態系に芳しくない影響が出るのではないかとの不安を消すことはできない。

◇      ◇

 皆川市長は先ごろの住民説明会で「計画地がラムサール条約登録湿地に近接し、大規模施設の建設は国際的な大問題になる」と説明した。専門家の意見を聞いた上、政治判断で中止を申し入れたとしても、先に住民に説明して理解を得るのが、行政が踏むべき手順ではなかったか。それをしなかったことで、住民の態度を硬化させた。

 「景観と生態系」を守ることと「脱炭素に向けた再エネ確保」。双方とも目指すところは、将来の世代にいい環境を残したいということにほかならない。鶴岡と遊佐の風力発電計画は、その両極に挟まれて揺れているが、行政と事業者を含め、最善の接点を見いだす努力をしなければならないことは確かであろう。

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