2023年(令和5年) 8月4日(金)付紙面より
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戦時中、広島市で被爆を体験した鶴岡市新海町の洋画家・三浦恒祺さん(93)の75年に及ぶ画家人生の集大成となる個展「洋画家 三浦恒祺展」が2日から同市の致道博物館で始まった。会期中は前後期に分け、自身の被爆体験を基に描いた「原爆の形象」と、庄内の自然風景を描いた「庄内の憧憬(しょうけい)」を展示する。
前期の「原爆の形象」は50号を中心に最大130号まで油彩画43点を展示。三浦さんの画歴とともに描く内容も変化しており、初期の「原爆の形象No.2」(1995年)から「No.3業火」や「No.4黒い雨」(ともに96年)は、原爆の炎で赤く染まった街や放射能物質を含んだ黒い雨が降る被爆地を抽象画で表現した。作品から原爆に対する三浦さんの怒りや絶望、悲しみが伝わってくる。
その後、「No.6破壊・復活」(99年)のように希望と苦しみが同時に描かれた作品に変化し、2010年前後には太陽のような円状の輝きをキャンバスの上方に置いた「復活」シリーズを描いている。
「No.38I CAN.1」(2017年)以降の「I CAN」シリーズは、太陽が照らす世界の抽象画に庄内浜など自然風景の具象画を加えている。三浦さんは「年を重ね、原爆への恐怖や怒りよりも平和への祈りや願いが強くなったのだと思う」と話す。
また、三浦さんは「93歳と高齢になったこともあり、今回が人生最後の個展になるかもしれない。少しでも多くの人に戦争の悲惨さや平和の尊さ、美しい庄内の自然を伝えられれば」と語った。
前期の展示は今月25日まで。後期展「庄内の憧憬」は26日から来月18日まで。このほか旧鶴岡警察署庁舎ホールで三浦さんの小品や淡彩画、スケッチなどを来月18日まで展示している。