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2023年(令和5年) 8月19日(土)付紙面より

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対談 『らんまん』から考える人材育成と植物科学 3

東山 哲也氏( 鶴岡市出身・植物学者東京大学大学院理学系研究科教授)
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門松 秀樹氏(『らんまん』時代考証担当東北公益文科大学教授)

競える仲間がいる環境大事…東山氏
受験勉強がない自由さに違い…門松氏

 東山 受験の制度自体が天才を育てるようなものではない。出題する側の問題が大きいと思うが、教科書に沿って公平に採点可能な範囲で試すしかない。どうしてもそこが目標になってしまう。世界では米国が天才を生み出す社会になっている。飛び抜けた才能が出てくるとどんどん上に行って全体を盛り上げて天才を作り出す。全員ではないにしろ、新しいものを作り出す能力が育っている。それが米国の独壇場になっている。日本はあまり得意ではなく、不得意な気にさせられてしまうが、江戸末期や明治初期をみるとすごい人がたくさん出ているので別にできないことではないと思う。そうした社会システムをうまく作り出せれば。天才を生み出すのは自由とサポート環境。才能が出てきたら潰さないこと。制度として周りが応援してどんどん次に進めてあげるのもやり方の一つだと思う。

 自分のことで言えば鶴岡南高校の雰囲気は自由だった。本当になんでも好きにやれた。鶴岡南でも東大でも自分より数学ができる人がいたし、いろんな分野ですごい人がいる。そうした中で自分の強みは、他の人と競っていける部分は何なのか考える。競える人が周りにいることが大事だと思う。何もないところからいきなり出てくる天才もいるのかもしれないが、多くの場合は仲間がいる中から育ってくるものだと思う。教えてもらうというよりは同年代の環境の中で刺激し合いながら育つものが大きい。


 門松 自分は大学から慶應だが、幼稚舎からいる人が友人にはいた。一番違うと思ったのは受験勉強をしなくて済むので高校時代まで好きなことをやっている。高校時代まで好きなことをやったから大学時代は勉強して資格を取ったり、国家試験に挑戦したり。他の人は大学に入るまで受験勉強をしているから、大学4年間は遊ぶ感覚になる。附属高校の先生も受験勉強をさせなくていいので自由なことを教えている。普通だったら受からないからやらなくていい授業もやっている。

 現在の日本の中等教育は「いい大学に何人入れられるか」がゴールになってしまっている。それでは人を育てるのは難しい。「東大に何人行きました」などが評価になってしまう。米国は天才もいるけれども、そもそも学校に行かずに教育を諦めてしまった人もいる。そうした二極化を防ぐという点では日本の均質的教育はうまく機能しているともいえる。ものすごい天才がいない代わり、文字が読めない人もいない。それは近代では大事な部分だったと思う。


 東山 できる子は海外を目指すので、東大を滑り止めにする場合もある。東大に入学しても、海外の大学を受験して半年ほどでいなくなってしまう例がある。優秀で海外に目を向けている学生はそうした動きをすることもあると知った。孫正義育英財団では天才を生み出すために奨学金制度をしているが、「すごい子がいるな」と感じる。


 門松 「ギフテッド(特別な才能を持つ人)」といわれる子がいるが、子どもは自分の興味のあることしかやらないので、成長する過程でうまくいかなくなるケースがある。子どものころはそうでも成長すると実はそんなに優秀ではなかったという人もいる。早期天才教育が天才を生み出せるか。1割程度は天才を生み出せるかも知れないが、残りはそうならないので、残りの子をどうするか課題もある。高校生くらいで「ギフテッドかもしれない」と言われるのと、幼稚園・小学校くらいで親から「ギフテッドだ」と言われ続けるのは、そうでなかった場合受けるショックが大分違うと思う。難しい所だ。

東山 哲也氏
東山 哲也氏

門松 秀樹氏
門松 秀樹氏



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