2023年(令和5年) 9月12日(火)付紙面より
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市場に出回らない魚の利用価値を高めようと鶴岡市の羽黒高校(加藤和司校長)女子生徒が「コノシロ」の缶詰作りに取り組んでいる。完成品は、全国の高校生を対象に地域性に富んだ魚の缶詰を奨励し商品化を目指す「第3回LOCAL FISH CAN(ローカルフィッシュ缶)グランプリ」(来月7、8の両日、東京会場、日本財団・海と日本プロジェクト主催)に出品する。1カ月に迫った本番に向けて生徒は「最優秀賞を取ってコノシロにスポットライトを当てたい」と意気込みを見せている。
庄内浜でコノシロは通年、定置網や刺し網で獲れる。すし屋で好まれる「コハダ」が大きくなった魚で、成魚は20―30センチ。小骨が多いことから成長すると敬遠され、鮮魚店やスーパーに出回ることはない。
未利用魚の缶詰作りを手掛けているのは、いずれも普通科キャリアデザインコース2年生の▽野尻萌緑(もえ)さん(17)▽河井香良(きら)さん(16)▽岸田小春さん(16)▽五十嵐夢尋(めろ)さん(16)―の4人。「コノシロは一年を通して漁獲され資源もあるという魚。未利用魚の知名度を上げるにはもってこい」と着目した。コノシロの切り身にチャーシュー、メンマを中華スープ味に合わせる。価格は500円前後(1缶130グラム)を想定。グランプリには100缶作って出さなければならず試作段階は県立加茂水産高校に協力を依頼。食品製造実習室にあるレトルト釜を使って仕上げた。
12日午後には、行列ができる人気ラーメン店として知られる「琴(こん)の」(羽黒町黒瀬)の店主から缶詰を試食してもらい、アドバイスをもらう。パッケージデザインを担当する河井さんは「羽黒という地域性を出すため山伏を描きたい。時間が限られているので急いで仕上げないと」。岸田さんは「目標はグランプリで最優秀賞。おのずとコノシロのイメージアップにつながるから」と笑顔を見せる。野尻さんと五十嵐さんも「多くの人が食べたいと思うような缶詰にしたい」と試作段階から力を込める。
グランプリに出品後、鶴岡市の居酒屋店主に缶詰を売り込む予定。女子生徒4人は「パスタに絡めたりサラダのアクセントにしたり。アヒージョにしてもいいと思う。ラーメンのトッピングなど、いろんな料理に使ってもらえれば」と話す。
指導する羽黒高校・社会科の加藤勇太郎教諭(45)は「グランプリでは缶詰のほかに、プレゼンテーション能力も求められる。未利用魚、低利用魚を何とかしたいという生徒の取り組みをバックアップしたい」と語った。コノシロの缶詰はラーメン店主の試食会を経て今月下旬に完成させる。