2023年(令和5年) 9月13日(水)付紙面より
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鶴岡市朝日地域の月山ダムの水位が過去最低を記録した。梅雨明け以降、記録的な少雨となり、9月11日現在の有効貯水率は36・3%。ダム湖の側面は建設時に伐採した木の切り株や根っこがあらわになっている。月山ダム管理所によると、飲み水と農業用水に影響を与えることはないが鶴岡市全世帯のうち8割以上の飲料水を月山ダムに頼っている市上下水道部や稲作農家は「もし月山ダムがなかったらと想像するとゾッとする。水資源のありがたさを痛感した夏になった」と話している。
月山ダムは2002年4月に運用が始まった。集水面積は約240平方キロメートル、総貯水量は6500万立方メートルで、このうち有効貯水容量は5800万立方メートル。赤川の洪水防止、庄内南部の灌漑(かんがい)用水、鶴岡市を中心とした飲料水を賄う。水力発電で年間約9000戸に相当する電力も生む。
これまで月山ダムは春の雪解け水や雨水を蓄え安定した水位を保っていた。ところが今年は7月下旬から1カ月以上、まとまった雨が降らずダム湖の水位は日に日に減少。8月の雨量は田麦俣の観測地点で44ミリだった。通常、平均水位(標高)は237メートルあるが今月11日までに223・79メートルまで下がった。
月山ダム管理所の職員は「これほど水位が落ちたのは初めて。最低水位の210メートルを下回ると利水に影響を及ぼすが、まだ許容範囲内なので飲み水と稲刈りが始まった灌漑用水に関して心配することはない」と説明する。
鶴岡市は月山ダムを通じて県企業局朝日浄水場から飲料水を受水。高坂配水場など7カ所の配水場にパイプで水を送り、独自水源の温海地域や豊浦地域などを除く世帯に飲料水を供給している。
市上下水道部の担当者は「月山ダムに切り替わる前地下水を使っていた鶴岡市にとって、今年の極端な少雨を想定して考えた場合、水不足に陥った可能性が高い。あらためてダムの恩恵を感じる」と語る。
羽黒地域で稲刈りを進める農家は「例年4月上旬から9月15日まで用水路に水が引かれるが、これまで止められたり水量を下げられたことは一度もない。ダムがあってこそ。今年の夏は特に、当たり前のように使っている水のありがたさを感じた」と話す。
今から30年前の1990年代後半、巨額な予算を投じて建設するダムは「ムダ」と主張する市民団体も少なくなかった。しかし地球温暖化による気候変動で局地的な豪雨や干ばつが多発。世界規模で水と食料の確保は年々高まりを見せている。
月山ダム管理所の猿田誠所長(57)は「水は限りのある資源。今後も節水を呼びかけながら八久和ダムと荒沢ダムとの連携を図り治水・利水の両面でダム管理を行っていきたい」と話した。