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2023年(令和5年) 9月17日(日)付紙面より

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考 eスポーツで地方創生(上)

 eスポーツをご存知だろうか。電子機器を用いるコンピューターゲームやビデオゲームの対戦を、スポーツ競技としてとらえる際の名称である。なんだゲームのことか、と軽く見てはいけない。今やeスポーツは成長産業であるばかりか、新しい文化や社会の創造、地域の活性化や高齢化問題など、社会課題を解決するツールとして注目されているのだ。

 国内の競技人口は約400万人、世界では1億3000万人といわれる。競技年齢はいわゆるZ世代(1990年代半ばから2000年代前半生まれ)から、上は50代まで及ぶ。国際大会も盛んに開かれて、大きな大会の優勝賞金は1億円を超える。

 2019年の茨城国体からは正式種目外の文化プログラム事業として、eスポーツが加わった。まもなく9月23日から中国杭州市で開幕するアジア大会では、正式種目入りし日本選手団が参加する。中国は北米や欧州と並び、eスポーツの成長が著しい地域だ。国際オリンピック委員会(IOC)にも、2024年のパリ五輪から正式種目に採用しようとする動きがある。

 一方、eスポーツをスポーツと呼ぶことに、違和感や疑問を持つ人もいる。けれどもトレーニングによって技術と精神を鍛え、競技中はチームプレーやコミュニケーションが要求され、勝利の達成感を得られる点では、スポーツと呼ぶにふさわしい。それでも「身体活動が少ない」「ゲームは遊びに過ぎない」との指摘もある。

 では「身体活動が少ない」という指摘について考えよう。日本へは明治維新後に近代スポーツが持ち込まれた。これは富国強兵のスローガンにのって発展し、鍛練のためのスポーツが定着したので、スポーツといえば肉体運動を伴うイメージが一般化した。しかし欧米ではチェスも「マインドスポーツ」として認められ、オリンピック種目入りを目指すくらいで、スポーツの範囲が広い。

 また「遊びに過ぎない」という批判に対してはどう考えるか。プロ棋士を見て「将棋を指して遊んでいる」とは誰も思わない。なぜか。将棋が競技として社会的に認知されているからだ。ゲームを個人で楽しむ場合と競技は違う。eスポーツは認知される途中であり、スポーツの概念も時代と共に変わっていく。

 次に経済効果についてである。直接的な市場規模は2025年には、600億から700億円と推測される。eスポーツは周辺産業への波及領域が広く、それらを含めた市場規模は2025年に2850億から3250億円と試算されている。

 ゲームに使用される機器の消費だけでなく、イベントや大会を開けば多くの参加者や観戦者の集客力が期待でき、それに伴う各種の消費支出がされる。観光資源と組み合わせて関係人口、交流人口の増大も考えられる。またスポンサーへの波及効果は他のスポーツと同じであり、eスポーツの社会的注目度が高まれば、もっと経済効果が期待されるだろう。

 政府もeスポーツの活用に意欲を見せて、「日本のeスポーツの発展に向けて(令和2年3月)」という報告書をまとめた。経済効果の数値はこれに基づく。報告書は首相官邸のホームページから、知的財産戦略本部構想委員会のワーキンググループの資料として公開されている。

 次回では地域創生に活かす自治体の実際の取り組み例と、山形県の状況について述べていきたい。(続く)

論説委員 小野 加州男



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