2023年(令和5年) 10月4日(水)付紙面より
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酒田市の9月定例議会が開会した。9月に就任した矢口明子市長は「市が抱えるさまざまな課題の根本原因である人口減少をできる限り抑制し、人が減っても豊かに安心して暮らせるような街づくりをする」と、市政を担う抱負を述べた。同市では市街地活性化につながる整備が動いている一方、足踏みが続く計画もある。街づくりに向けた市の役割は大きい。
人口が減少期に入った。減り方が大きい地方では、商業施設や住宅を中心部に集約させる「コンパクトシティー」構想へ期待が高まった時期もあった。しかし中山間地など広大な市域を抱える地方の都市での実現には、なかなか難しい構想でもあった。矢口市長の、人口減少下で安心できる街づくりの手腕に期待がかかる。
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矢口市長は具体的な施策として(1)市民所得の向上(2)働きたいと考える全ての市民が働くことができる環境の整備―などを柱に掲げた。併せて「人口減少時代こそ一人一人に求められる役割が大きい」と、豊かな街づくりに向けて市民の総力が集まることが欠かせないとも述べた。
酒田市では1976年10月の酒田大火後、中心街の核、中町の清水屋デパートと、JR酒田駅前の大沼デパートと大手スーパー・ジャスコによる「商業二極回遊型」による市街地活性化に期待が集まった。酒田北港への企業進出もあって人口が10万人を超え、2005年の広域合併で11万8400人に増えた人口も21年3月に10万人を割った。一方、合併で市域面積は旧市域の3倍余の約600平方キロに増え、国の政策による広域合併がコンパクトシティー構想を難しくしたとも言える。
街の元気の指針の一つが、中心街に集まる人の動向。市の調査によれば、ジャスコ跡地前、大通り商店街、中町モール3地点合計の人出は14年の2718人から20年には2167人に減り、21年の中心市街地活性化に関するアンケート調査(回答数1071件)では、5年ほど前と比べて中心市街地を訪れる機会が増えた・やや増えたは15%、変わらない39・5%、減った・やや減ったは39%。数字からは中心市街地離れの傾向が見えてくる。
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長年の懸案のJR酒田駅前の再開発が完成し、観光の中核の山居倉庫周辺、県立酒田商業高校跡地の再開発事業も進む。中町の旧パイレーツビル跡地にホテルの進出も決まった。「人が集う」施設ができる事は、にぎわいの創出につながる期待が持てる。
閉店から2年、破産手続きが進められている旧マリーン5清水屋跡の開発に焦点が集まる。土地の購入を希望する企業があるが、購入価格、再開発方法などで地権者の意見が分かれている。酒田の経済を支えてきた中町商店街の再開発は、矢口市長が進める街づくりにも大きく関わる。旧マリーン5清水屋跡再開発の、早期前進を願いたい。