2023年(令和5年) 10月11日(水)付紙面より
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田んぼは初夏の装い?―。庄内平野の田園で刈り取った稲の株から伸びた「ひこばえ」が秋風に揺らいでいる。稲作農家によると高温で刈り取りが早まり、9月に入っても気温が高かったことで「ひこばえ」の成長が早いという。中には背丈が30センチ以上になり穂が出たものも。田園は田植えをして約1カ月後の青々とした稲がたなびく「6月上旬」のたたずまいを見せている。
「ひこばえ」は刈り取った後の株に再生した稲。一般的には「二番穂」とも呼ばれる。農研機構九州沖縄研究センターでは、九州地方の温暖な気候を生かし「ひこばえ」の再生二期作の研究を進めている。8月上旬に収穫した後に出てくる「ひこばえ」を栽培。11月上旬に2回目の再生稲を刈り取り農家の収量増につなげる。同センターのほ場(福岡県筑後市)で行った実証実験では平均収量(10アールで0・5トン)の約3倍に当たる1・47トンの収穫を得た。今後は再生二期作に適した品種の選定や施肥技術の開発を行い、低コストの加工用米生産(みそ作りや米菓用)の普及を目指す。当然のことだが東北では、冬に向かう気温と日照不足から「ひこばえ」が成長することはない。
鶴岡市羽黒町赤川でつや姫と雪若丸を育てている佐藤与一さん(65)は「稲を刈って2、3日もすれば(ひこばえが)伸びてくる。10年、20年前と比べて近年は稲刈りした後の株が見えなくなるほど(ひこばえが)青々と成長する。昔と違って田んぼの様相は変わった。これも温暖化の影響の一つだと思う」と話す。
10月に入り庄内平野の稲刈りは大詰めを迎えたが中には収穫前の稲穂と、芝生を敷き詰めたような緑の「ひこばえ」とのストライプがくっきりと現れた田んぼも。「初夏」と「実りの秋」が入り混じった光景が見られる。
県農業技術普及課では稲作農家に対して田んぼを耕し「ひこばえ」を土で分解、来シーズンに向けて養分を蓄える「早めの秋耕(あきこう)」を呼び掛けている。