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荘内日報ニュース


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2023年(令和5年) 10月13日(金)付紙面より

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考 百条委員会、審議は尽くされたか

 なんとも中途半端な報告である。本当に審議が尽くされたのか、疑問が残る報告書だ。9月28日の鶴岡市議会本会議で、百条委員会の報告を聞いた率直な感想だ。

 今回は皆川治市長の「100万円不記載問題」に関し、「公職選挙法に抵触する疑いがある」とする報告である。佐藤博幸委員長は約20分の報告を行い質疑に入ったが、採決までの約50分、議場はほとんどの間騒然とし、不規則発言が飛び交った。まさに百条委内部の意見の対立が、本会議の場で繰り返されたようだ。

 まず皆川市長と元支援者の証人尋問を、1回しか行わないことは納得しがたい(市長は時間の都合により、2回に分けて実施)。証言の食い違いがある場合は複数回の尋問を行い、事実に迫るのが本筋だ。1回だけの尋問で事実が明らかになるとは考えにくい。

 次に百条委のほとんどの採決は6対5の多数決、しかも新政クラブ(当時)と公明の賛成で決まった。佐藤委員長は9月25日に報道陣に対し、「政争の具にするつもりはない」と語っていたが、この結果を見て政争でないと考える人はいないだろう。

 また今回の本会議採決は、あくまでも調査終了の採決であって、報告結果を可決したり、市長を告発するものではない。「告発する予定はあるか」との質問に対し本間新兵衛議長は、「今回の審議は委員長の報告に対する質疑のみである」として却下した。

 だが百条委の方針を問う質問は当然ではないか。仮に市長と元支援者の証言の食い違いに対し、元支援者の証言を採用するなら、市長は虚偽答弁の可能性があり、地方自治法に基づき告発も可能だ。他の自治体では首長を告発した事例も多い。鶴岡の百条委は何を着地点にしようとしているのか。ひとつの付議事項だけ終了宣言を急ぐ姿勢に違和感を覚える。

 一方、市民への情報公開はまだ不十分だ。市のホームページには、本会議後、報告書や関係書類が掲載された。しかし重要な物的証拠は黒塗りが多く内容の判読が困難だ。また議事録公開は39回中の第18回で中断しており、残りの公開が急がれる。

 ただしこれは付け加えたい。混乱を招いた原因は皆川市長の不可解な行動にある。仮に100万円を「選挙運動費用ではない」として報告書に記載せずそのまま返金するか、逆に報告書の記載を訂正して返金せず手元に留めおくか、いずれかであれば論理的矛盾はなかった。しかし報告書に記載し、かつ返金したのは矛盾する行動で説明が必要だ。

 報告書では支援者が「元支援者」に変わっていく背景に、ハチ公像建立の要請を皆川市長が退けた事情が明らかになった。つまり市長を不可解な行動に導いたのは、元支援者と市長の個人的関係の変化が影響すると推測されるが、真相は闇に包まれている。この事情は常に頭に置いて理解すべきだろう。



 さて今回報告がなかった「パワハラ疑惑」解明には、さらに多くの時間がかかりそうだ。パワハラは個人の主観で決まるのではなく、厚生労働省の基準に従い客観的に判断すべきものだ。審議の過程では専門的な第三者に調査を委託する案があったが、採用しなかったのは正しい決定か。

 またパワハラは、一般的に当事者間の主張の食い違いが大きい。100万円不記載問題のように1回だけの尋問で、真相に迫れるとは到底思えない。しかも時間が経つに連れ人の記憶は薄れて曖昧になっていく。百条委はこの困難な判定にどう対応するのか。

 といって断定を避け、「パワハラに該当する恐れがある」などという印象操作は許されない。百条委はパワハラの有無と、あるならば何件が該当するか、明確な結論を出す責任がある。この判定は法と指針に基づくものであり、多数会派の力で押し切ってはならない。

 百条委の目的はあくまでも事実を究明することだ。活動が目的に沿っているのか、市民はこれからも根気よく監視を続ける必要がある。

論説委員 小野 加州男



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