2023年(令和5年) 10月15日(日)付紙面より
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「ニュースは新聞でなく、インターネットで見聞きする」―。そんな風潮が広がって、新聞離れが進んでいる。今年の新聞週間(15~21日)の代表標語は札幌市の31歳の女性の「今を知り 過去を学んで 明日を読む」。記録性のある新聞は過去を知ることができ、再考することで新しい発想も生まれる。
ネットで検索すれば、多彩なニュースや情報を見ることができる。しかし、それらは新聞社(テレビも)が取材した記事を転載しているケースが多い。新聞社の取材がなければネットに載ることがない情報もある。新聞の存在意義は大きいということであろう。
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新聞には投書欄があり、読者から喜怒哀楽の多彩な声が届く。新聞へのお叱りや励ましの声、政治批判の投書も少なくない。掲載は実名、年齢、職業、居住地が明記されている。真実を報道する新聞の使命を表す一端で、誹謗(ひぼう)中傷は目にしない。本紙の「読者のページ」も同様だ。
ネット全盛の時代で、誰もがSNSを駆使して情報を発信するようになった。しかし匿名による発信も多い。不確かな情報を基に他人を誹謗中傷するような書き込みをし、誰かを傷付けることも少なくない。一時の感情の高まりという勢いに任せ、暴言を発信することはないだろうか。新聞の投書欄と明らかに異なる発信(発言)の仕方だ。
昔から語られてきた学びの基本は「読み書きそろばん」。物事を知って理解するには、まず読んで考えることに始まる。受け身ばかりでは、何か困難に突き当たった時、乗り越える力が育たないのではないか。
日本新聞協会が募集した「新聞配達に関するエッセーコンテスト」小学生部門の最優秀賞は、北九州市の4年生の「夜明けのサンタさん」。冬も新聞を届ける配達員のため小遣いでカイロを贈ることにした。新聞は取材と配達する人がいて成り立つ。何よりもうれしい励ましの言葉である。
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荘内日報の「社是」に「真実の報道で公正な世論を喚起し、地域と共に歩む」とある。地域紙のため、中央の動きを詳細に報道するには限界がある。そんな中にあって、地域に密着した出来事を満載して読者に届けることで、地域に愛される新聞であり続けたいとの誇りを持っている。
新聞は「社会の出来事について事実や解説を広く伝える定期刊行物」と辞典にはある。新聞にはトップ記事のような大きな扱いもあれば、俗に“ベタ記事”と呼ぶ1段記事もある。だが、そのベタ記事にこそ地域の出来事が詰まっている。新聞を隅々まで読む。新聞は一過性では終わらない知識と思考の宝庫である。
論説委員 粕谷 昭二