2023年(令和5年) 10月25日(水)付紙面より
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「秋の夜長」。秋が深まるにつれ夜が長く感じられるとの意味であり、「読書の秋」である。家で過ごす時間が長くなり、本を手にできる時間も増える。一年の行事、節気、祭事、記念日などを載せている「福壽暦」の10月下旬の家事欄に「図書整理と読書の雰囲気づくり」とある。27日から第77回「読書週間」(11月9日まで)が始まる。
今年の読書週間の標語は「私のペースで しおりは進む」。本を一気に読む人もいれば、区切りの良いページにしおりを挟んで「次の楽しみ」につなげる人もいる。しおりは読書の“脇役”に当たるような、言い得て妙の標語だ。そしてポスターは少女がしおりに乗って飛びながらページをめくっている。
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書籍や雑誌を読む人の割合の「総合読書率」が減り、読まない「不読率」が高くなっている。「読書」というと、つい文学的な名作、古典などを考えがちだが、子どもから読書に関心を持ってもらうには雑誌や漫画でもいいという意見もある。「大人が望む本を読まない」ことを、つい「子どもが本を読まない」と考えてしまう大人もいるとされるが、何よりも子どもが夢中になって本を読むことが大事だろう。歴史や古典を漫画風で著した本もある。それによって読解の習熟度が高まり、書籍への関心に引き込まれていくこともある。
今年の文化功労者に選ばれた漫画家の里中満智子さんは、受賞の感想を「私が選ばれることで、漫画家がまっとうな仕事として世間に認められるならうれしい」とマスコミの取材に応じている。女性の生き方、社会への問題意識、戦争などを少女漫画で表現し、世に問うた。多くの作品を送り出すことになった原点は、図書館で本を読みあさったことにあるという。
読書週間は読書の力で平和な文化国家をつくること、特に子どもに良書を読んでもらいたいとの趣旨で1947年、出版社、書店、図書館、新聞社などの提唱で始まり、日本は世界有数の「本を読む国民の国」づくりの土台になった。鶴岡市は読書週間の草創期に、市立図書館や学校図書館の充実問題が市や議会で取り上げられている。
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図書館で本に触れ、気に入った本は借りて自宅でゆっくり読む。絵本であっても美しい日本語で書かれていることで、読み進みながら物語に引き込まれて感性と想像力を養い、正しい言葉を覚える。スマートフォンでも本を読むことができる。本を持ち歩くより簡便だという派も増えている。しかし、紙の本のページをめくる感触はスマホを寄せ付けない。
学校では授業のデジタル化も進んでいるが、どんな教科であっても学習の基本は「読むこと」にある。文章をしっかり読んで理解しないと回答を得られない。とにかく活字に触れよう。そこから本を読む楽しさが広がるはずだ。