2023年(令和5年) 10月29日(日)付紙面より
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人生の最期まで食事を楽しむため、支援の在り方について考える「在宅における食支援フォーラム庄内」が21日、三川町のいろり火の里なの花ホールで開かれ、関係者らが地域における食支援について理解を深めた。
嚥下(えんげ)食や食支援の周知、ケアの充実を促進することで、高齢者の誤嚥(ごえん)性肺炎防止や胃ろうに頼らず食事ができる日常を目指すことなどを目的に、県庄内保健所(蘆野吉和所長)が主催。医療・介護、庄内5市町の関係者計約110人が参加した。
蘆野所長が食支援について基調講演を行った後、愛生会山科病院(京都市山科区)の荒金英樹消化器外科部長が「食の支援による京のまちづくり」、公立能登総合病院(石川県七尾市)の長谷剛志歯科口腔(こうくう)外科部長が「食べる力の本質を読み解く」と題しそれぞれ講演を行った。
荒金部長は京都における「嚥下食プロジェクト」について紹介。「京都の料亭料理人たちに嚥下食の調理を依頼すると、まったく理解してもらえず苦労した」と。長い闘病生活で食事がほとんど自力摂取できなくなった女性が、料理人が提供した嚥下食を笑顔で完食し、感動した家族が泣きながら料理人にお礼を伝えたというエピソードを紹介し「『食べることがつらい人にこそおいしい食事を』という理念を初めて理解してもらえた」と、食支援における地域理解の重要性を述べ、「現在の地域包括ケアは医療システムの中に要支援者を閉じ込めてしまうイメージがある。医療と産業が連携し、支援の可能性を広げることが必要」と続けた。
オンラインで講演した長谷部長は「食支援は要支援者一人一人が抱えている問題を明確にし、解決することが重要。『食べない(食べたくない)』のか、『食べられない』のか、嚥下やかみ合わせ以外にも、薬剤の問題や心理的な側面も考えなければいけない」と支援者側の課題も指摘した。
その後、庄内地区や全国で食支援活動を行っている団体が今年実施した活動について報告したほか、会場では県内11事業所の嚥下食に関する商品などの展示・紹介が行われた。