2023年(令和5年) 11月1日(水)付紙面より
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日本海岸林学会(学会長・林田光祐山大農学部教授)主催のシンポジウム「東日本大震災からみた海岸林の津波減災機能と再生の10年」が29日、酒田市の東北公益文科大学で開かれ、海岸林の機能や維持、今後の将来像などについて意見交換した。
シンポジウムは同学会酒田大会の開催に合わせ、公益大公益教養プログラム「FORUM21」の一環として一般公開で行われ、海岸林の保護などに関心のある市民ら約70人が聴講した。
シンポジウムは2部構成。1部では同学会副会長で森林総合研究所OBの坂本知己氏、静岡県農林技術研究所主任研究員の鷲山立宗氏、専修大商学部教授の岡田穣氏、国土防災技術株式会社部長の佐藤亜貴夫氏が、静岡県が取り組む「森の防潮堤」、北海道白糠町をモデル地区に進められている海岸林造成、震災後の同学会の取り組みなどをそれぞれ発表した。
このうち、震災後の海岸林被害について報告した坂本氏は「宮城県の一部では流されず残ったものもあったが、リアス式海岸にあるものは引き波などで大きな被害を受けた。海岸林は飛砂防止に絶大な効果があるが、漂流物の阻止や波力を弱めたりするなどの効果もある。防潮堤とは異なり、完全に止める訳ではないが、防災では二者択一ではなく、防潮堤と海岸林それぞれの特性を考えて整備を進めるべき」などと指摘した。
2部では県庄内総合支庁森林整備課森づくり推進室室長補佐の尾形俊成氏、公益大公益学部教授の呉尚浩氏、庄内海岸のクロマツ林をたたえる会会長の梅津勘一氏が登壇し、庄内の海岸林の現状や地域の保全活動、森林保育の重要性などについて説明した。意見交換では「松くい虫を絶滅させることは可能か」「クロマツの立ち枯れ被害のほか、維持管理の手が足りず、今後も減少するならば、最前線以外はアカマツや広葉樹などへの段階的な切り替えも考えていくべきでは」など活発に意見が交わされた。