2023年(令和5年) 11月2日(木)付紙面より
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山で暮らし、タカを飼育、訓練して狩りを行う「鷹匠(たかじょう)」の暮らしについて理解を深める講演会が28日、酒田市の本間美術館(田中章夫館長)で行われ、「最後の鷹匠」といわれる天童市在住の松原英俊さん(73)が山での暮らしや経験を語った。
松原さんは青森県青森市出身。大学を卒業後、真室川町在住の当時79歳の鷹匠に弟子入りし、タカの飼育や訓練方法について学んだ。現在は天童市の山あいで春から秋にかけて畑仕事、冬に鷹狩りを行う自給自足の生活を送っている。
日本では狩りのためであっても絶滅危惧種であるクマタカやイヌワシを捕獲することは禁止されているが、「鷹匠」の希少性から松原さんは唯一、クマタカやイヌワシを使って冬期間狩りをすることが許可されている。
この日は市内外から多くの人が訪れ、先着50人の定員は満員に。松原さんはタカ科のアカケアシノスリ1羽と弟子の宋萌美さん(18)と共に来館、毛皮を着用し、山刀を帯刀した入山する時の姿で登場した。
「師匠の元から出て山小屋で生活していた頃、苦労してウサギを1匹捕まえても毛皮1枚50円ほどの価値しかなく、とても貧しい生活だった。山の中で電気もガスも水道もなく、薪ストーブで調理してドラム缶風呂に入り、オイルランプの明かりで生活していた」と鷹匠になったばかりの頃の厳しかった山での暮らし、幼い頃に山で捕まえて大切に飼っていたアオダイショウを親から逃がすよう言われ泣く泣く河原に逃がしに行ったエピソードなどを話し「自分が親になって思うことは、子どもが好きになったものに親は理解を示してあげてほしい」と語った。
また旧朝日村(現・鶴岡市)に住んでいた頃の話も懐かしそうに語り、「雪が深くて雪下ろしなどが本当に大変だった」と。生き物や自然と向き合うことの危険も説き、「地球上にはまだ未知の自然がたくさんある。メディアで言われていることだけでなく、自身の目で確かめながら生きることが大切」と経験の大切さを話し、聴講者たちは興味津々の様子で聞き入っていた。