2023年(令和5年) 11月2日(木)付紙面より
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体の不自由な人や中山間地の住民などを対象に、行政システムにつながる端末を搭載した車が出向くことで町役場に来庁せずに行政サービス手続きなどができる庄内町のマルチタスク車両出発式が1日、町役場で行われた。機材を搭載した車が地域を回る「行政MaaS(マース)」の取り組みは県内では尾花沢市に次いで2例目で、庄内では初。
同町は無料通信アプリ「LINE(ライン)」の町公式アカウントにマイナンバーカードを使った公的個人認証サービスを導入するなど来庁せずに各種申請ができるデジタル化を進める一方、今年4月から先行してサービスを開始している福島県いわき市を視察するなど「届ける」「寄り添う」をキーワードにした移動出張型行政サービスの準備を進めてきた。
今回導入したのは、MONET Technologies(モネ・テクノロジーズ、本社・東京都千代田区、清水繁宏社長)が開発した「マルチタスク車」にNTT東日本山形支店が協力した機材を積み込んだもの。ワゴン車ベースで運転手も含め10人乗り。町役場のシステムとオンラインでつながる資機材を搭載し、テーブルを設置するなど車内のレイアウトを柔軟に変更できるのが特徴。町によると、準備が必要なものもあるが、窓口でできる手続きはほぼ対応可能という。
この日の出発式には、富樫透町長や上村実モネMaaS推進部長、渡会俊輔NTT東日本山形支店長らが出席。富樫町長は「今日からマルチタスク車が町内を走る。町民が行政サービスを使いやすくなるようこの車両の活躍に期待している」とあいさつした。
その後、車両は同町狩川の狩川佐藤組前に移動。申し出のあった同社社員の乙坂定夫さん(70)ら2人が車両内でマイナンバーカード交付申請を行った。オンライン申請用の写真撮影、書類説明など1人約10分で作業が完了。乙坂さんは「仕事で時間的に厳しく来てもらえるのはありがたい。特に難しいことはなく、すぐに手続きが終わった」と満足そうだった。
町ではマルチタスク車両が公式ラインによる申し込みを受けて申請者に出向くサービスのほか、イベントなどに出張して移動型スマートフォン教室やデジタル健康チェックなどデジタルデバイド解消に向けた取り組みなどへ活用する考え。