2023年(令和5年) 11月5日(日)付紙面より
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鶴岡市教育委員会は4日までに、地方の文化向上に尽くした個人、団体に贈る本年度の高山樗牛賞と高山樗牛奨励賞を発表した。樗牛賞は該当者がなかった。小中高校生を対象とした奨励賞は、高校生の部で酒田西高2年の阿部未羽(みはね)さん(17)と酒田東高3年の近藤安珠(あんじゅ)さん(18)が選ばれた。授賞式は21日に同市のグランドエル・サンで行われる。
樗牛賞は、歴史小説「滝口入道」などで知られる庄内が生んだ明治の文豪・高山樗牛(1871―1902年)の偉業を顕彰し、地方文化の向上を目的に出身地の同市教委が1958年に制定した。今回が66回目。樗牛賞の該当者なしは2年連続10度目。奨励賞は文芸・評論・作文などで優秀な作品を発表した庄内地方の小中高校生に贈られる。
阿部さんは、人型ロボットなどの様態があまりにも人間に近くなると、見る人に違和感や嫌悪感を抱かせるとされる「不気味の谷現象」に発想を得た、小説「蓋」(400字詰め原稿用紙換算で23ページ)を発表。ロボットが人間に近づいていく様子と主人公のロボットに対する心情の変化が巧みに表現され、人間が利便性を求めて進化させたロボットとの向き合い方を考えさせられる作品で、豊かな想像力と表現力が評価された。
近藤さんは、同年代の主人公が自分の将来と向き合い、悩みながらも周囲の人たちとの関わりを通して成長していく様子を描いた、小説「サマーメモリー」(400字詰め原稿用紙換算で25ページ)を発表。母や祖母などの登場人物像を鮮明、丁寧に描き、主人公の飾らない日々を細やかな情景描写や行動描写でつづった。主人公の心情につながる表現の工夫が随所に見られ、巧みな表現力と構成力が評価された。