2023年(令和5年) 11月7日(火)付紙面より
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鶴岡市黒川地区に伝わる黒川能(国指定重要無形民俗文化財)上座の座長と能太夫を長く務めた齋藤賢一さん(76)=椿出=の引退に伴う「肖像画掲額祝賀会」が5日、同地区の黒川能の里・王祇会館で開かれた。お披露目された齋藤さんの肖像画は後日、同地区の春日神社の拝殿に掲げられる。
齋藤さんは5歳の時に行われた王祇祭(2月)で大地踏みの演者を務めて以来、70年余りにわたり黒川能に関わった。2003年5月に上座能太夫を襲名し、座長として座の運営や役者の指導に尽力。この間、長く演じられていなかった「住吉詣」や「通盛」などの演目を掘り起こし、後世に残す努力も重ねた。18年の春日神社式年祭で能役者最後の舞台を務め、今年3月末をもって座長と太夫を引退した。
祝賀会には上下両座の関係者や黒川能保存会代表理事の皆川治鶴岡市長など約100人が出席。剱持博行実行委員長が「齋藤さんの長きにわたる功績をたたえる会に大勢の方から出席していただき感謝申し上げる。時間の許す限り楽しい時間を過ごしてほしい」とあいさつした。
続いて神社に掲げる肖像画が披露され、齋藤さんへ孫たちから花束が贈呈された。皆川市長など来賓あいさつの後、祝言能が行われ、下座が仕舞(能の一場面を面や装束を着けず、紋服や袴のままで舞う略式上演)「高砂」、上座が狂言「末広」と能「猩々」を上演した。
上演後、齋藤さんが「下座の上野由部座長をはじめ多くの方に協力いただき、座長を務めることができた。中でもずっと支え続けてくれた妻のみちに『ありがとう』の言葉を伝えたい。伝統文化と祭りを残すため、上座を受け継ぐ人たちは道をたがえず将来につないでもらいたい」と謝辞を述べた。その後、上野座長の音頭で乾杯し、齋藤さんの功績をたたえながら思い出話に花を咲かせた。
齋藤さんの後継は当面の間、渡部千春さん(61)=上の山=が太夫代行、遠藤啓一さん(67)=橋本=が座長代行をそれぞれ務める。