2023年(令和5年) 11月9日(木)付紙面より
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クマなど野生鳥獣の目撃情報が頻発する中、酒田市は本年度から情報通信技術(ICT)を活用した鳥獣わな監視装置による捕獲に取り組んでいる。今年9月の導入からこれまで延べ4回設置し、ツキノワグマ4頭を捕獲。市によると、設置後早ければ当日中、遅くとも3日以内に箱わなに入ったという。設置によって箱わなの見回り作業に従事する、県猟友会酒田支部員らで構成する市鳥獣被害対策実施隊員の負担が大幅に軽減され、その効果がさらに期待される。
7日に行われた定例会見で矢口明子市長が明らかにした。
市によると、今月2日現在、市内での本年度のクマ目撃・出没件数は189件。新市がデータを取り始めた2006年以降で最も多く、このうち8割は中山間部に位置する八幡、平田両地域に集中しているという。市街地近郊、人家敷地内での目撃状況もあることから市はホームページや広報などで注意喚起を行っている。
今回本格導入した監視装置はNTTPCコミュニケーションズ(東京、工藤潤一社長)が開発した「みまわり楽太郎」。ソフトウエアが組み込まれた持ち運びが可能な監視装置を箱わな周囲に設置、鳥獣が入って扉が閉まるなどわなの作動を検知すると、捕獲状況の画像と時間があらかじめ登録された電子メールに通知される仕組み。従来は箱わな設置後、猟友会員らが頻繁に見回る必要があったが、その回数を減らすことができるとして全国で導入が進む。
市は本年度、国のデジタル田園都市国家構想交付金を活用して監視装置を2台購入、これまで中山間部を中心に設置。捕獲確認後はスムーズに作業ができたという。一方、市環境衛生課によると、導入前までは朝夕など1日2回は隊員が箱わなの状況確認のため見回りをしていたが、装置設置後は隔日にした。
市鳥獣被害対策実施隊員は70代が半数を占めるなど高齢化と人手不足は深刻な状況となっており、矢口市長は「安全確保、見回り労力の削減という課題を同時に解消でき有効と捉えている。機器の台数に限りがあるため全ての捕獲現場での活用は難しいが、今回の効果を踏まえ、来年度以降の対応を考えたい」と話した。