2023年(令和5年) 11月10日(金)付紙面より
ツイート
経営者の高齢化、後継者不足などによって惜しまれながら廃業を余儀なくされる中小企業の事業承継を支援しようと、東北経済産業局と中小企業基盤整備機構東北本部は本年度、「自治体関与型中小企業事業承継支援モデルの構築・展開事業」を実施。市町村が関わる必要性や役割を探るのが目的で今回、モデルとして東北地域全体で6市町を選定。このうち酒田市は鶴岡市と共に広域連携で承継支援事業に取り組む。支援に向けた広域による取り組みは県内初。
7日に開かれた定例会見で矢口明子市長が明らかにした。
東北地域は他地域に比べ、経営者の高齢化、後継者不足が深刻な状況。東北経産局と中小機構東北は、日本経済を支える中小企業の雇用を確保するとともに、技術喪失防止の観点から円滑な事業承継を喫緊の課題と捉え、より経営者に身近な存在の市町村に支援体制を構築してもらおうと、同事業を開始。酒田、鶴岡両市を含め選定した東北6市町からそれぞれ支援策を企画・実行してもらい、そのノウハウを蓄積して東北地域全域に広げていく。
両市が連携して取り組む支援策は、▽実態把握に向けた商工会議所や商工会の会員など域内約5500事業所を対象にした事業承継アンケートの実施▽2代目以降の後継者候補のコミュニティーづくり、経験談のシェアを目的にした事業承継セミナーの開催▽アンケート調査で把握した「事業を譲り渡したい側」と、「域内外で事業を譲り受けたい側」をオープンネーム(社名公表)でマッチングする、第三者承継支援イベントの開催―で、アンケート調査は既に始まっており、12月まで実施する。これを元に域内マッチングイベントは来年1月、域外は同2月に開催する予定。
取り組みの中心となる酒田市産業振興まちづくりセンター「サンロク」の所長を務める安川智之副市長は、会見で「事業承継にはさまざまな形がある。まずは2代目に決まっている人がいかに引き継ぐべきか、先輩経営者から聞いたり、仲間同士で話し合うコミュニティーを構築する」と。さらに「マッチングする場合、匿名では経営者、財務状況が不明。経営者相互の相性も大切になってくる。オープンネームでのマッチングはこれまで難しいとされてきたが、近年は全国的にも増えてきている。それを庄内地方でも実施したい」と述べた。